メロドラマ作りはご一緒に②
酔わせてあげられたら逃げてもいい

エロ注意報発令!これはあまりエロくない話です。今、エロエロ気分の人は飛ばして他を読んでくださいませ。
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どんなに辛い失恋をしたとしても、3か月たつと悲しんでいることがすっかり馬鹿らしくなり忘れてしまうということを経験上知っていたので、私は黙ってこらえて3カ月が過ぎるのを待ちました。
しかし、2カ月ほど泣き暮らしたある日。
急にまたアキラさんが私のブログにコメントをしてくれるようになりました。
「雑誌に掲載されたんだね?すごいね」
私は喜んで、急いでアキラさんに電話をし、メールを送りました。
でも電話にもメールにも返事はもらうことができませんでした。
それ以来、私のブログにまたアキラさんのコメントは書かれるようになりましたが、電話とメールの返事はいつまでたってもきませんでした。
そういうことか。
アキラさんは私を漫画家としての応援は今後もしてくれるけど、もう個人的な付き合いはやめたいということか。
アキラさんの私のブログに書くコメントの文面というか、言葉の使い方も随分、変わってしまったような気もする。よそよそしくなってしまったような気もする。
しょうがないわ。
私はあきらめようと思いましたが、もう一度だけアキラさんにメールをしてしまいました。
「もう本当に今後、付き合ってくれなくていいのですが、最後に一度だけ会いたい。
今まで応援してくれたお礼が言いたい。
私が落ち込んだり、くじけそうなときにあなたの応援がどんなに励みになったか知れません。
出版社にとりあげてもらうようになれたのはあなたのおかげです。
もう一度だけ会いたい。
だめかな?また私がもう一度だけ、そっちに会いに行っちゃ」
その返事は来ずに、私のブログには、アキラさんの私の作品に対する純粋な感想のコメントだけが毎日、書き込まれていました。
しかし、それから3日後にアキラさんからやっとメールの返信がありました。
「来週、出張で東京に行くのでそのとき会いましょう」と。
『会おう』じゃなくて『会いましょう』というのが、他人行儀で少し悲しかったですが。
私がアキラさんとの約束の日に、約束の店に行くと、そこには女の人が待っていました。
白いブラウスの女性が一人、私を迎えました。
アキラさんの姿はありませんでした。
一体、どういうことでしょうか?
「私が誰だかわかりますか?」
と女性は言いました。
「アキラの家内です」
私は、驚きました。
そして、アキラさんの奥さんは、私たちの二人の仲を知っていたと言いました。
一夜限りのことも知っていました。
私はどうしていいかわからずとりあえずしどろもどろで謝罪をしました。
そして、もう今後、いっさいアキラさんとは会うつもりもなく、今日は最後のお礼にきただけだったと私は話しました。
「いいんですよ。何も謝らなくても」
奥さんは静かにほほえみました。
「私は今日、主人の代わりにあなたに会いに来ただけなのです。どんな方か一度だけ見てみたかったので」
と奥さんは言いました。
私は何と言っていいかわかりませんでした。
今後、アキラさんに会うつもりも連絡をとるつもりもなかったのは本当のことでした。
今後はアキラさんが元気に生きていて、それで私の作品を時々読んでくれるだけで、もう十分だと思っていました。
しかし、奥さんはまだ何かを言いたそうでした。
奥さんの口を開きかけて何か言おうとしてはやめるしぐさを数回私は見ました。
何度目かに奥さんはとうとう切り出しました。
「実は・・・」
私は奥さんの口元を見つめました。
「実は・・・主人は死にました。」
え?
「2か月前に」
え?
私は奥さんのおっしゃっていることが飲み込めませんでした。
「で、でも、アキラさんは昨日も私のブログにコメントをしてくれていたと思うのですけど?」
と私は言いました。
奥さんはしばらく黙ったあとおっしゃりました。
「あれは・・・実は・・・私です」
私は衝撃を受けました。
「主人が亡くなってから遺品の整理をしていたのですが、パソコンのお気に入りにあったあなたのブログを見つけました。あなたとのメールのやり取りも見つけました」
奥さんはうつむき加減に淡々と話されました。
「ずっと以前からのあなたと主人のやりとりを見ました」
奥さんの話は続きます。
「私は最初は頭にきて、あきれました。
でも生前の妻の私が知らなかった主人の一面のことをもっと知りたくなってしまい、主人とあなたとのやり取りや、あなたのブログを私は隅々まで見てみました。
そうしたら、だんだん私もあなたのことが好きになってしまいまして。
いえ、複雑な感情で、あなた自身を好きとはとても言えないのですが。
主人が好きだったあなたのこともなんだか、悲しいというか、なんだかいとおしくなってきたというか。」
奥さんの話をきいているうちに私の目には涙がたまってきました。
「そして、だんだん、読んでいるうちに私は、あなたというよりも、あなたの描く作品のほうが好きになってしまいました。」
目を見開いて奥さんの顔を見つめながら、私の目からは大きな涙がボロボロこぼれ落ちるのがわかりました。
「私はあなたの描く作品の純粋なファンに知らないうちになってしまいました」
私は声を出して泣きそうになるのをこらえました。
こらえると、勝手に涙が流れ続けました。
「それで、私はちょっと主人を真似てコメントしたくなってしまったのです。最近、あなたのブログにアキラ名義でコメントを書いているのは私です。」
私はテーブルの上に泣き崩れました。
私は大声をあげて泣きました。
困ってしまった奥さんが両手を私のほうに伸ばしてきました。
私は奥さんの両手をつかむと、握りしめました。
そして泣きじゃくりながら私は
「どうもありがとうございます・・・。ありがとうございます」
と言いました。
*****
(場面、変わって電話をかけている白いブラウスを着た女性)
(ここからはアキラの話になります。)
「もしもし。アキラ兄ちゃん。言われたとおりにやってきたよ。嫁子さんのフリしてきたよ」
「おうありがとう。すまんな」
「貸し一個だからね。」
「わかっている。わかっている。ボーナス出たら新しい乾燥機買う予定だから、うちの乾燥機、プレゼントするよ。」
「うふふ。サンキュー!でもさあ、まったく、いい年して浮気の後始末を妹に手伝わせないでよ。」
「すまなかった。
しかしなあ。嫁子にはばれそうになるし、
漫画描きの彼女は極度なロマンチストでナルシストで、恐ろしい情熱家だし。
一人でどんどん勝手に盛り上がってゆくし。
こっちは、彼女に勤め先も知られているし、彼女がなんか変な行動に出る前に、納得してもらいつつ早いとこ、なんとか終息しないといけなかったんだ。
で、たまたまお前が彼女と同じ東京に住んでいたから。」
「まあいいわ。兄貴には、いろいろ世話になってたし。
・・・・・
で?もう、明日からコメントとかしないでいいの?」
「そんだけ泣いて感動のエピソードを作ってやったんなら、もう大丈夫だろ。
情熱家の彼女の気持ちにもこれで十分応えられたと思うよ」
「アキラ兄ちゃんひどいよね。ただ若い子とエッチがしたかっただけなのにね。」
(いや。ホントにひどいのはどっちだったろ?
彼女はいつもナルシスト。一度も本当の俺を別に見ていなかった。
自分の作品を好きな人のことを彼女は好きだっただけ。
・・・と思いつつも、妹にそんな情けないことは言えないし。)
「いやこういう経験が彼女の今後の作品に繁栄されたらいいなって。俺なりの彼女に対する最後の最大の誠実なプレゼントなんだけど。」
と、言える範囲の本音を俺は妹には言っておいた。
-----終わり--------
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