生まれ変わっても私を見つけてくれる 後半
姿を変えても私を見つけて
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ブログをはじめて、4か月目になりました。
ブログは数か月続けると、検索ワードからくる読者が増えるときいていました。
検索ワードでくる読者とは、
わざわざランキングサイトで『新作を書きました』のお知らせをせずとも、わたくしのブログを全然見たこともない人がグーグルやヤフーの検索で
『エロい話』とか
『女は自分の体を見て興奮する』とか
『朝 エッチ』とかのワードで検索して、私のブログを見つけ出して訪れてくれる人のことです。
噂どおりこの人たち4か月目から急に増えはじめました。
4か月目からブログに自分の絵を載せようと思っていたのに、私は今更、ブログに自分の絵を発表できなくなってしまいました。
なぜなら、自分の作り上げた読者も増えたこのブログの雰囲気を変えたくなくなってしまっていたのでした。
なぜなら絵の持つ力がすごいとことを私は知っているからです。
いえ、その『絵の力』って良いことを言っているんではないのです。
文章は読まないと、ある程度腰をすえてつきあってもらえないといけないですが、その分、つきあってくれた人はちゃんとつきあってくれます。
私のブログもリピーターの方が大変多いです。
でも絵は一目で好き嫌いを判断されてしまいます。
その絵の好き嫌いは一発で一目で決まると思っています。
そして、絵の持つ『破壊力』、『ぶち壊し力』ってすごいですからね。
せっかく私の文章が好きで読んでくれている人が私の絵を見て、「なんっじゃ?こりゃ?」になりかねないってことです。
テレビ番組の『アメトーク』とかで、時々、『絵が下手な芸人』の絵をみんなで笑うというやつがあるのですが、ほんっと絵の持つ力ってすごいですから!
芸人さんが一生懸命考えたネタよりも、マジメに描いた下手な絵のほうに大笑いですから!
私は、ああいう衝撃でこのエロブログを破壊したくない。
なのでブログには私は自分の絵を描けなくなってしまいました。
ここはここながらのイメージを保ちたく、そのイメージを私の絵でぶち壊したくなくなってしまったのです。
絵が酷評されたことがまた私の記憶によみがえります。
そのうち、文章のブログの方は検索が増えたり、リンクを増やしたりすることで1日のアベレージが200人訪問、1000記事以上読まれることになってきました。
そしてまた新しいことに気が付きました。
『検索』で訪れる人が多いということは、私の最新記事を読む人ばかりではないということです。
4か月も前に書いた記事を読む人もいるということです。
4か月も前に書いた記事は今読むと、よみにくいし誤字脱字も結構あります。
まずい。
この今まで書きなぐってきた300近い記事を見直して書き直さないとまずい。
せっかく検索してきてくれた人がつまんない記事だと判断すれば二度と来てくれない。
新しい記事を毎日、ひとつ書きながら、過去のの記事を毎日また少しずつ、読みなおし、修正する日々が始まりました。
このエロブログを改善したり読者を増やすことに時間を費やしてしまい、4か月目から再開しようと思っていた絵をまた描けなくなってしまいました。
そんなある日、会社の友達に帰りに一緒に付き合ってほしいところがあると言われました。
私はまっすぐ家に帰ってブログにとりかかりたかったのでしぶりました。
でも友達が強引に
「絵好きだったでしょ?すぐそこでイラストレーターの○○さんの原画展やっているのよ。行きましょうよ」
と言います。
私は、会社の近くのデパートで開催されていたイラストレーターの原画展に連れていかれました。
そして、友だちの付き合いのつもりだったし、すぐに帰るつもりだったのに、私は帰れなくなってしまいました。
私は美しいそのイラストの原画に触れて心を奪われました。
いつまでもその場を離れたくなくなり、友達に「いい加減帰ろうよ」と言われるまで、そこを去ることができませんでした。
素晴らしいイラストの生原稿を見た私はその夜は興奮で眠れませんでした。
そして『絵の世界に再び戻りたい』と思いました。
次の朝、私は文章のブログをやめることを決意しました。
でもいつもブログを読んでくれていた人たちと別れるのがつらい。
何より、コメントをいつもくれていた方と別れるのがつらかった。
実はよくコメントをくださる方と私は連絡先を交換して、私たちは何度も、現実の世界で会っていたのでした。
しかし、その人とは現実の世界のほうでちょっとしたことで喧嘩をしてしまい、現実の世界ではもう連絡を取るのも会うのもやめてしまっていたのでした。
でもその人は、喧嘩をしたあとも、現実の世界では絶縁したあとでも、変わらず、私のブログにだけはコメントを書き続けてくれていました。
もうメールアドレスも捨ててしまったし、その人と私の接点はこのエロブログだけとなっていました。
このブログをやめるということは本当にもうその人との絶縁を意味します。
大変、つらい。
大変、つらいけど、その人には相談せずに私は黙ってブログをやめることにしました。
相談せずにというか相談をする手立てももうなかったわけです。
そしてエロブログをやめて数か月後。
あれから、絵の練習する毎日に戻り、落ちてしまっていた絵を描く感覚を取り戻し、ようやく気に入った絵が描けるようになったので、私はいよいよ新しく絵のブログを始めることにしました。
今回は定期的に厳しい評価をしてくれるところに作品を見てもらいつつも、自分だけのブログでは自分の好きなように自由に絵を発表するようにしました。
エロブログを書いていたときとは違うペンネームでまるで生まれ変わって絵のブログを始めた私でした。
数週間後、絵のブログに読者の方のコメントがつきました。
『とても素敵な絵ですね』
ペンネームを見ると、以前、私の文章のブログによくコメントをくださっていた人と同じペンネームでした。
すごい偶然・・・・。
私はそう思いました。
その後も何回もその人はコメントを書いてくれるようになりました。
コメントの書き方が私の文章のエロブログにコメントしてくれた人と似ていました。
でも、まさか何百万もこの世にあふれるブログの中で前回のブログをよく読んでいた方が、ジャンルを変えた私のブログに巡り合う可能性はまずないはずです。
それに私は、新しい絵のブログには文章はほとんど書いていませんでした。
事務的に、絵を購入されたい方への手続き方法などのことしか文章は書いていませんでした。
新しいブログのほうにも、もしも文章をたくさん書いているのであれば、万が一、目にとまったときに同系統の好みの文章だと思われる可能性もあったでしょうけれど、私は、この絵のブログには必要最低限の文字しか使っていませんでした。
自分の写真も一枚も載せていないし。
以前のエロブログとの関連性はひとつも示していません。
以前のブログと現在のブログの共通点があるとしたら、以前も、現在も表現方法は違うけれど私が自分のうったえたいことを思い切りブログにぶつけているということだけでした。
数週間後、恐る恐る試しに私はコメントの返事を書いてみました。
「勘違いでしたら申し訳ありません。あなたは、まさか、昔『おフロに入らせて』っていうブログによくコメントをしてた方じゃないですよね?」
次の日、私の質問にまたコメントの返事が書かれていました。
「書いてました。見てました。『おフロに入らせて』っていうブログにコメントよく書いてましたよ! あなたもあのブログの読者だったんですか?」
この人は生まれ変わって姿を変えた私を見つけ出してくれた。
何百万のブログの中から私を見つけ出してくれた。
以前も何百万のブログの中から私のブログを選んでくれたように。
また見つけてくれた。
絵を酷評され続けた日のことも、エロブログに一日二記事を書いて頭が禿げそうだった時期のことも、たとえ、このあと、自分の絵が一生、芽が出ないとしても。
プロの文筆家にもプロの画家にもなれないとしても、しろうとブロガーとして私はとても幸せなんじゃないか。
私はパソコンの前で涙が止まりませんでした。
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