攻防戦①
彼女がセックスを許してくれない

千夏はときどき、C原との初めてのセックスを迎えるときのことを想像していた。
C原が今よりもっとたくさん、千夏に「好きだよ」と言ってくれて、
今よりもっともっと気持ちが通じ合って、たくさんキスして。
そして、そんなある日に、C原が「千夏を抱きたい」と言ってくれて、千夏が黙ってうなづく。
C原がどこか素敵なホテルで予約をとってくれて、お部屋に入る。
「愛しているよ。千夏」とC原が言う。
そして・・・
ここから先は経験の少ない千夏ではあまり想像が膨らませられなかった。
社会人になってからロストバージンをした千夏は
まだ男性を一人しか知らず、しかもその人とも、通算で5回もセックス経験はない。
ハッキリ言ってあまりセックスの喜びとやらを知らない。
好きな彼にキスされたり、愛撫されたりすることに快感は感じたけれど、特に世の中のすきものたちが、そんなにセックス、セックスと言って、セックスにおぼれる気持ちはわからなかった。
千夏はC原とキスすることは大好きだった。
でもゆっくりとキスをする時間は許されなかった。
キスしてるとすぐにC原が千夏の胸やお尻をさわってくるからだ。
別に洋服の上からさわられるぐらい、ぜんぜんかまわないのだけれど、うっとり、ゆっくりキスをもっともっと味わいたいときに、すぐに体をまさぐられはじめてじまうと、千夏はつい
「ダメ」と言って、C原の手を押さえてしまう。
「ケチ」とC原が言って、手を止める。
「けちじゃないもん。キスに専念したいんだもん」と千夏が言うと、C原はそれ以上はやめてくれるときもあれば、いったんやめるが、少しするとまた、千夏を触り始めて、服の中に手を入れようとしてくることもあった。
それ以上はまずい・・・というときにC原をストップさせるのは、大変ではなかったが、いやだった。
なんかC原を傷つけるようで申し訳ないので千夏はいやだった。
C原に嫌われるのもいやだったので、断り方が大変、難しかった。
傷つけないように、嫌われないように、怒らせないようにどうしたらいいか千夏はよく考えていた。
できたら千夏がその気になるまでは、あまりアクションを起こしてほしくなかった。
そのためには、なるべく、二人きりの密室などには行かないように、夜遅くは出かけないようにしていた。
「いいね。ここ。」
「うん素敵」
「今度、行こうか」
「うん。行きたい。行きたい。」
千夏たちが住んでいる街から車で2、3時間、直線で100キロくらいのところだろうか。美味しいレストランなどが併設された素敵なおしゃれなビーチがテレビで紹介されていた。
「じゃ、来週の土日。いい?」
と、C原が千夏にきいた。
「うん。」と千夏は答えた。
「よし決まり。」
千夏は
「来週の土曜?日曜?どっち?」ときいた。
「だから来週の土日。」とC原は答えた。
「?」
「予約とっておくよ。」とC原は言った。
「予約?海水浴に行くのに予約なんているかしら?」
「何言っているんだよ。当然。いるだろ。こんな風にテレビで紹介されちゃって。
もしかしたら、今からだって、来週の予約なんてとれないかもしれないよ」
「そう?」
なんとなく話がかみ合っていないような気がしたけど、手帳を開いて、スケジュールを確認する千夏。
あ、来週の、土日のどっちか実家に行って、結婚式で借りたワンピース、お姉ちゃんに返しにいかなくちゃいけなかったんだわ。
まあ平日、返してに行ってもいいんだけど、仕事の帰りに行くのはしんどいから、マックス日曜日までには返さないといけなかったから土日のどっちかに行くって約束してたんだわ。
「ねえ。今、土日のどっちかに決めてもらってもいい?」
と千夏が言った。
C原は答えた。
「どっちか?どっちかじゃないよ。土日両方だよ」
「両方?」
「そう。両方」
「2日間も通うの?2日間も連続で泳ぐの?水泳部の部活みたい!」
と千夏が言った。
「違うよ。泊まるんだよ」
「泊まるの?近場なのに?」
「だって日帰りじゃゆっくりできないだろ。せっかくの休日、ゆっくりしたいよ」
「運転、半分、私もするから、あなたはゆっくりして」
「そういうことじゃなくて。向こうでゆっくりしたいだろ」
千夏は考えた。
比較的、近場だから泊まることなんて思ってなかった。
泊まるの?
「じゃ予約とるよ。」
C原が携帯で、電話を始めた。
「え。ちょっと待って。」と千夏は言った。
C原は電話で話しはじめた。
「もしもし。●●ビーチホテルさん?部屋を予約したいんですが、2名で来週の土日、1泊2日で・・・」
C原は電話でどんどん話を進めている。
「ねえ待ってよ。」
千夏はC原に声をかけた。
「ね、待ってったら・・・・」
千夏はC原の携帯を持っている手を触ろうとした。
C原はそれを、もう片手で制して電話を続ける。
「部屋タイプ?・・・そーだな。え~と・・・」
C原はホテルの予約係に言った。
「ダブルでお願いします」
千夏は伸ばしていた手を下した。
手を制されたことも頭に来たし、千夏を無視してどんどん一人で話をすすめてゆくC原の態度にもなんだか腹がたってきた。
「じゃあよろしくお願いします」
電話を切って、C原が千夏の顔を見ると、千夏はC原をにらみつけていた。
「何?怒っている?」とC原があわてて千夏に言うと、
「ちょっと待ってって言っているのにどうして聞いてくれないの?」
と千夏は言った。
「いや。あとで聞こうと思って。・・・とりあえず、相手と電話中だったし」
とC原は言った。
「どうしてどんどん決めちゃって予約しちゃうの?」
千夏は怒っていた。
「さも泊まることが当然みたいにどんどん進めてる」
千夏は続ける。
「待ってって言ってるのに・・・」
千夏を怒らせた。
まずいとC原は思った。
「いいかなって思って・・。ちょっと強引にすすめようと思ったのは確かだけど。ごめん。嫌だったら、もちろんやめるつもりだよ。もちろん君の気持ちを尊重するつもりだったよ」
とC原はあわてて言った。
「ダブルベッドはやめておこうね。ツインにする・・・・」とC原が言いかけて千夏の顔を見るとますます怒り顔だったので口を閉じた。
「私、ちゃんと好きって言われたこと、今まで何回かしかないのに・・・エッチなことだけどんどんすすめようとしている。
エッチして、さも当然のことのようにすすめようとしている」
千夏は言った。
「もう行かない。」
「ごめん!」
C原は言った。
「そんなつもりじゃないんだ。別にどうしてもエッチしようとかそういつつもりじゃないんだ。」
C原は一生懸命、言い続けた。
「それに好きに決まってるだろ?
好きなんてわざわざしょっちゅう言わなくたってわかってるだろ?
当たり前だろ。
当たり前すぎて、だからそんなに言わなかっただけで・・・」
千夏は完全にふくれていた。
「もう行かない」
「ごめん。悪かったよ。
これからもっとちゃんと言うよ。
好きだよ。千夏。愛してるよ。すごく愛している」
C原は千夏の両手を持って機嫌をとるように言い聞かせるようにゆすった。
「でもさあ
好きだからこそ、エッチしたいっていう気持ちもわかるだろ?
俺、別に変じゃないだろ?」
とC原は言う。
「・・・・・・
う・・・ん」
と千夏は言った。
でも、いつも千夏がC原を傷つけないように怒らせないように、いろいろ気をつかってあげているのに・・・と思うとやはりちょっと頭にきた。
あんまり、好きって言ってくれないのに、今突然、愛しているとか言われても。
エッチしたいから急に言ってるだけじゃないの。
そういえば、この前、千夏が脱がされかけたときも、いつも言わないくせに「愛してるよ」って言った。
そのことを千夏が言うと、
C原は
「気もちが盛り上がったときにそういうこと言うのは当然だろ?何がいけないんだ?じゃあどうすればいいんだ」
と言った。
そういわれるとそうなんだけど・・・と千夏は考えた。
少し間をあけてから
「どうする?やめとく?それとも日帰りでゆく。」
とC原は千夏にたずねた。
「う・・・ん」
なんと答えるか千夏は迷った。
ビーチには、C原と二人で本当に行きたかった。
二人で素敵な浜辺で過ごせたらなんて楽しいだろう。
また、C原が気を悪くしていたら、どうしようと思った。
C原は言った。
「それとも二部屋とる?」
「え・・・・?・・・・・・・
そんな我儘言ってもいいの?」
と千夏は驚いて顔をあげた。
「いいよ。怒らせちゃったおわび。」
とC原は言った。
「ありがとう」
二人は別々の部屋を2部屋予約しなおして、土日にビーチサイドのホテルに1泊することに決めた。
さて、土日になり、二人はでかけた
(・・・・・・続く・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)
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