恐怖の宇宙エロぐま・地球来襲③
津軽弁で宇宙人をあざむけ!

前回までの話はこちら➡恐怖の宇宙エロぐま・地球来襲① ②
土曜日に迎えに来たひろゆきと一緒にゆりあんは、この前のクマ型宇宙人の宇宙船に光とともに吸い込まれた。
そして月の裏側に停泊してあるという大きな”宇宙ステーション船”に向かった。
宇宙に出るなんて怖くなかったのか?
いや、ゆりあんの気持ちは、怒りの方が勝っていた。
銀座の宝石店で買った指輪を自分たちの星”タコスター”にゴロゴロある石だと言ってプレゼントして来た、黄色いクマのリボン博士。
ゆりあんは、怒りに震えた。
国立科学博物館に指輪を受け取りに行ったとき、受け付けの人は笑いを必死でこらえていた。
ゆりあんは、恥ずかしさでいっぱいになった。
また反応が恐ろしくてのぞけなかった自分のSNSをチラッと見てみると、知らない人から色々なことが書かれていた。
「宇宙人に宝石もらったことあるかって?
あるよ。だって私の彼(地球人)も広い意味では宇宙人だもん」
「どーしたんだこの人?男に指輪もらったことが嬉しくって見せびらかしてるのか?」
「私はタコ型宇宙人に会ったことあるよん」
またいくつかの宗教団体から勧誘のコメントが来ていた。
「迷える子羊よ。
我々と共に●△様のお導きを受けましょう」
などと。
ゆりあんを迎えに来た宇宙船には、この前の3匹のクマ型宇宙人はいなかった。
別の水色のクマや、紫色のクマが乗っていた。
そのクマ型宇宙人たちは、日本語が達者ではないらしい。
たどたどしい日本語で、
「ドウモドウモゆりあんさん。
レッツゴートゥザムーン。
ムーンにリボン博士、ピンキー、クマちゃんイルネ」
と言った。
リボン博士たちに怒りをぶつけようと思っていたゆりあんは肩透かしをくらった。
宇宙船で宇宙に出てから、外から見る美しい地球の姿を見てもゆりあんはあまり感動しなかった。
昨今、テレビや様々な映像で、美しい地球の姿は見慣れているからだ。
その様子にひろゆきは、驚いていた。
「感動しないんですか?
僕は宇宙からの地球を初めて見たとき、大声を上げてしまった。
あなたは物事に動じないタイプなんですね」

水色のクマたちが、宇宙船の機器の前に集まって、何か機器についてらしき話し合いを始めた時だった。
ひろゆきは宇宙船の窓際にゆりあんを連れて行った。
ひろゆきは楽しそうな大きな声で、
「こっちこっち。
こっちの角度だと宇宙がホント美しいんですよ!
見て!見て」
と言いながら、ゆりあんの腕をむりやり引っ張り、窓際に連れて行った。
そして、
「ほらあ!綺麗でしょお!」
とひときわ大きな声で言ったあと、ひろゆきは急に声をひそめた。
「ゆりあんさん、月に行ったら二人だけで話がしたい」
「え?」
クマ型宇宙人たちに背を向けて窓に向かった途端にひろゆきの顔は急にけわしくなっていた。
ゆりあんは戸惑った。
ひろゆきは、小声で続けた。
「ゆりあんさん。あなた、確かご親戚が東北人ですよね?
津軽弁はできる?」
「え?」
「僕、やつらに津軽弁はまだ教えていないんだ」
「え?」
「津軽弁なら、やつらにバレずに二人だけで会話ができる」
とひろゆきは言った。
もしかして、ひろゆきは味方か?
ひろゆきは、もしかしたらクマたちから逃れたがっているのか?
ゆりあんは、そう思った。
そこで、紫のクマ型宇宙人が、冷たい飲み物のグラスの乗ったお盆を持って二人の背後に近づいて来たので、ひろゆきは、また急に大きな明るい楽しそうな声に戻った。
「ほらあ!見てよゆりあんさん!
あの星雲、綺麗でしょうおお!」
紫のクマは、ゆりあんとひろゆきにグラスを渡しながら言った。
「ヒロユキサン、ご機嫌ね~」

月の裏側に停泊してあった巨大宇宙船の中の一室にゆりあんは案内された。
宇宙船の入口を入ったあと、銀色の長い通路を歩いてから、そこに到着した。
200平米くらいのそのホールは広々としていた。
壁に大きなスクリーンみたいのが掛けてあるのと、壁際に椅子がたくさん並べられているのと、ホールの中央には大きな丸いテーブルがあるだけだった。
テーブルの上には、なんかよくわからない物が入った多くの皿たちの中に、目立つように大きな寿司桶と、大きなカレー鍋と、ハンバーガーが山盛りになった皿が、混じっているのが見えた。
(何、このメニュー?
ひろゆきさんの好み?
それとも宇宙人たちの考える日本人が好きな料理?)
とゆりあんは思った。
大きな丸テーブルの周りには、20人ほどのクマ型宇宙人が立っていた。
みんなカラフルで可愛らしいクマたちだった。
クマたちは、ゆりあんとひろゆきが部屋に入って来ると拍手をした。
そのとき、部屋の向こうのドアが開いてリボン博士、クマちゃん、ピンキーが入って来た。
3人は、拍手の中、ゆりあんとひろゆきに向かって近づいて来た。
リボン博士は言った。
「ようこそようこそ。
ゆりあんさんお待ちしてました」
茶色い大型のクマちゃんは嬉しそうに、
「来てくれてよかったです~。
今日は楽しんでいって欲しいクマ~!
今日は、あのスクリーンに楽しい映像も流す予定クマ~」
と、壁に掛けてある大型スクリーンを指さして言った。
ピンク色のぽっちゃりグマのピンキーは、
「お疲れでしょう?
ゆっくり休めるお部屋もご用意してますので、後でご案内しますね。
今日は、ちょうど仕事の合間の息抜きパーティなんです。
この宇宙ステーション船で働く者たちが、入れ替わり立ち代わりで参加するパーティなんです。
全員一度には仕事を抜けられないけど、2カ月に一度、こういうパーティをするのです」
と説明した。
そこで拍手をしていたクマ型宇宙人たちは、ゆりあんコールを始めた。
「ユリアンサーン!」
「ウエルカム、ユリアンサーン!」
「ユ・リ・ア・ン!ユ・リ・ア・ン!」
「ビッグフライ!ユリアンサ〜ン!」
(ん?なんかおかしいのも混じってる?)
ゆりあんはそれに圧倒された。
リボン博士に会ったらすぐに、指輪に対する怒りをぶつけようと思っていたのに、そのタイミングを逸してしまった。
ゆりあんとひろゆきは、ピンキーによって丸テーブルの寿司桶の前に誘導されていった。
ピンキーは言った。
「ひろゆきさんに教えてもらったんです。”お寿司”の作り方。
上手に再現できました。
美味しいですよ。
我がタコスターでも大人気メニューとなりました」
ゆりあんの隣に立っていた赤い色のクマ型宇宙人も、口を挟んで来た。
「スシ、サイコー!
ワタシ週1でタベテルネ!」
ピンキーに勧められてひとつ食べた寿司は確かに美味しかったのでゆりあんは驚いた。
ピンキーはニコニコ笑った。
そのとき、壁に掛けられていた大型モニターが、音をだした。
大きなモニターに映像が映し出された。

大型モニターには、クマ型宇宙人たちの星、”タコスター”の風景が映し出されているようだった。
山や、大草原、湖などの美しい風景が映し出された。
ピンキーはじめ会場の全員がスクリーンの方に釘付けになった時に、ひろゆきは、すばやく小さな声でゆりあんにささやいた。
「こいつら、ウソばっかです。
この寿司、今日、くら寿司のテイクアウトで僕が買ってきたものですよ」
「まじか?」
とゆりあんは驚いて、ひろゆきに確認しようと思ったのだが、そのとき、会場から大きな歓声があがったので、それ以上話せなかった。
茶色い大型クマ型宇宙人のクマちゃんが、マイクを持ってモニターの前に立っていた。
クマちゃんは日本語で、
「今日は、地球からのお客様ゆりあんさんと、日ごろ宇宙船でお仕事に頑張っている皆さんにタコスターの映像をお送りしたいと思います」
と言ったあと、タコスターの言語で同じことを言ったようだった。
モニターは、しばらくタコスターの美しい風景を映していたが、次に映像に地球人が出てきた。
「あ!地球人!」
とゆりあんは叫んだ。
地球人の欧米人だった。
かなりイケメンだった。
クマちゃんは説明した。
「我が星で、地球語の英語の教師をしているクリストファーさんです。
28才独身です」
映像の中の地球人の欧米人クリストファーは言った。
「ユリアンサ〜ン。
タコスター、サイコーです。
オマチシテマース」
次にインドの王子様みたいなイケメンも、映像に登場した。
マイクを握ったクマちゃんは説明した。
「地球のインドからいらしゃったダルシャンさんです!
博士号を持った32才独身です」
映像の中のダルシャンさんとやらは、
「ユリアンサン。
アイタイ。
イッショにタコスターで働きましょう。
そしてユリアンサンとデートシタイ」
と言った。
次に地球人の韓国人のアイドルスターみたいな男の子が映像に出て来た。
その人は達者な日本語で言った。
「ゆりあんさん。
タコスターは素晴らしい星です。
ゆりあんさんが来てくれるのが僕は楽しみです。
僕はあなたに会いたい。ゆりあんさん」

ゆりあんは思った。
(タコスターにイケメン地球人がたくさんいるのね~。
みんな私みたいにスカウトされたのかしら?)
そのとき、ゆりあんの隣に立っていたひろゆきは、突然、津軽弁でゆりあんに言った。
「騙さぃればまいねだ」
親戚には津軽の人がいたが、ゆりあんはあまり詳しくはなかったが、かろうじてこれはわかった。
ひろゆきが、
『騙されてはだめです』
とゆりあんに伝えようとしていることがわかった。
ゆりあんも津軽弁で、
「どごがではなすて」(どこかで話したい)
とひろゆきに言った。
ひろゆきは、
「もぐすうふりするべ」(煙草を吸うフリをしよう)
とささやいた。
そのとき、ピンキーがこっちを振りむいた。
「ね。
我が星には、ステキな地球人がたくさんいるでしょう?」
とピンキーは言った。
ゆりあんは、顔を満面の作り笑顔にして、
「ほんとですねえ!
なんだかタコスター、行ってみたくなってきたわ」
と言ってみた。
そしてゆりあんは、
「あ、ピンキーさん。すいません。
私、煙草吸いたいんですけど。
この宇宙船は禁煙ですか?
禁煙ですよね~?」
とたずねた。
ピンキーは、
「ああ!気づかなくってごめんなさい。
あなたは愛煙家でしたね」
と言った。
ピンキーは、ゆりあんとひろゆきを喫煙室に案内していった。
喫煙室には、三人ほどのクマがいた。
狭い喫煙室は煙でいっぱいだった。
「ゴホゴホ!
私は、そこで待ってますね」
とピンキーは言うと、喫煙室を出た。
ゆりあんは、
(やった。ひろゆきと二人だけで話ができる。
自分が喫煙者であったことを今日ほど感謝したことはないわ)
と思った。
ゆりあんが口を開こうとすると、ひろゆきは、ポケットから出した煙草に火をつけながら、
「気をつけて!
ここでも津軽弁で。
そしてなるべくニコニコしながら楽しそうにして!」
とすばやく注意をした。
そうだ。
ガラス張りの喫煙室のすぐ外でピンキーはこっちを見ている。

次回に続く
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