恐怖の宇宙エロぐま・地球来襲②
ゆりあんと宇宙人の攻防

前回までの話はこちら➡恐怖の宇宙エロぐま・地球来襲①
初老の地球人のひろゆきは、ゆりあんに言った。
「僕と一緒に、タコスターに行きましょう。
あ、”タコスター”と言うのが、この人たちの星の名前です」
ゆりあんはブンブンと首を振った。
そして、ゆりあんはハッキリと言った。
「私は、クマさん達の星、”タコスター”とやらには行かないです!」
すると、黄色いクマ型宇宙人のリボン博士は、恐ろしいことを言った。
「じゃ、ゆりあんさん。
あなたは死ぬというんですか?」
可愛らしい外見でなんてことを言うのだろう?と思いつつ、ゆりあんは、
「死にもしません!!」
と大きな声で言った。
茶色いクマちゃんが、
「でも地球にはタイムマシンはないんでしょ?
一日前には戻れないんでしょ?
ああ、そっか?
地球には、記憶喪失になれるような薬はあるんですか?」
とたずねてきた。
ピンクのぽっちゃりしたクマのピンキーも言った。
「私たちの星に来ないのであれば、選択肢は、死ぬか記憶喪失になるかしかないですもんね?」
ゆりあんは、怒鳴った。
「あのねえ!」
そして続けた。
「私が、タイムマシンで一日前に戻りたいとか、記憶喪失になりたいとか、死にたいとか、逃げたいとか言ったのは、ただの戯言なのっ!!
あなた達、地球人のことを勉強したいって言ったわよね?
あなたたち、勉強が全然足りてないわね!
あのね!地球人は、ときには本気じゃないことも口に出したリするのよっ!」
リボン博士は、感心したように唸った。
「ほほう〜。
ますますあなたには我が星に来ていただきたい人材ですね。
日本語以外のことも色々教えていただけそうだ」
******
こういうことになった。
月の裏側には、クマ型宇宙人たちのこれよりも大きな宇宙船が停泊しているらしい。
リボン博士たちは今日は一旦そこに戻るが、今度の休日にゆりあんをそこに招待したいので、考えておいてくれということになった。
リボン博士は言った。
「ゆりあんさん。
あなたを無理やりタコスターに連れて行くつもりはありません。
ただ、今度の週末は、月の裏側の宇宙ステーションでパーティーをするので、美味しい物でも食べながら、私たちの星の素晴らしい映像などを見ていただきたいのです」

ゆりあんは、宇宙船から解放された。
家に戻されると、疲れ切ってすぐに眠ってしまった。
次の朝起きたときに、あれは夢だったのか少し考えたあと、夢ではないとすぐに理解した。
宇宙船を出る時にお土産にもらったダイヤモンドみたいな宝石の指輪が机の上にあるのがベッドの上から見えたからだ。
「ほんのお近づきの印です。
あなたたちの地球でこういうのは貴重なものらしいですけど、うちの星にはこういうのゴロゴロあるんです」
と言われてもらったものだった。
ゆりあんは、急いでガバッと起きあがった。
そして、クマ型宇宙人にもらった宝石の指輪を手に取りながら考えた。
昨日は宇宙人たちは紳士的だったが、まだよくわからない。
平気ですぐ、『死ぬ』とか言う。(自分も言ったけど)
どんな思考回路をしているのかよくわからない。
恐ろしい。
ゆりあんは、机に座ってパソコンを開いた。
そして、あちこちにメールと、投稿をはじめた。
クマ型宇宙人に遭遇したことを自分ひとりのことにしておいたら、何かのはずみで静かに消されてしまうかもしれない。
ゆりあんは、県知事のHPと、政府のHPのご意見コーナーと、区役所の相談コーナーにメールした。
宇宙人にさらわれかけたということを詳しく書いて。
保護してほしい、助けてほしいと書いた。
そのあと、ゆりあんは自分のツイッターとインスタグラムに、クマにもらった宝石の画像を掲載して、
『これ宇宙人にもらいました。
どなたか私と同じような経験をされた方はいませんか?』
と投稿した。
なぜなら、ゆりあん一人が、ピンポイントで狙われたとは思えない。
クマ型宇宙人たちは、もっとたくさんの日本人たちにアプローチしてるはずだ。
そのあと、ゆりあんはネットの無料掲示板のいくつかに同様のことを書きこんだ。
「昨日、こんなことがありました。
他に経験のある人はいませんか?」
その時点で、AM8時30分くらいになったので、ゆりあんは、勤め先の会社に電話した。
「体調が悪いので、今日は午前中はお休みさせてください」
と告げるために。
ゆりあんが会社に架けた電話は、なんとあの同僚が取った。
ゆりあんが不正をしようとしていたのを目撃した同僚だ。
ゆりあんは、急に現実の世界に引き戻された。
同僚は優しかった。
「そう?大丈夫?
ゆっくり休んでね。部長には伝えておくよ」
と言ってくれた。
電話を切ってからゆりあんは、顔を両手で覆った。
(ああ!!あんな優しいこと言ってるけど、ホントは心の中で私を軽蔑しているんだよね?)
ゆりあんは、頭を振った。
「ああ、でも今はそんな場合じゃない!」
ゆりあんは、今度は、親戚のA子さんに電話をした。
A子さんは、英語がベラベラだった。
ゆりあんは、A子さんに頼んだ。
「朝からごめんなさい。
今から私が送る日本語を、英語に訳してほしいの!!
すいません。
なるべく早くしてください。
英訳したら送り返してください!」
ゆりあんは、県知事や政府宛てに書いた日本語の文章をA子さんに送った。
アメリカ政府にも、宇宙人のことを伝えたかったのだ。
そこまですませると、外出の準備を始めた。
そこで、同居しているお母さんがゆりあんの部屋にやってきた。
「今朝は随分ゆっくりしてるけど、大丈夫なの?
今日はフレックスタイムの日なの?」
「うん。そう。
それよりもお母さん、きいてきいて!」
ゆりあんはそこまで言ってから、ふと迷った。

家族には、宇宙人のことを話すべきか?
いや、もしかしたら、クマたちの希望にゆりあんが応じなかった場合、そのことを知っている人たちも口封じのために、ゆりあんもろ共一緒に消されてしまうかもしれない。
「なに?」
と母はゆりあんにきいた。
ゆりあんは、家族には宇宙人のことは何も話さないことに決めた。
「ううん、お母さん、なんでもない」
ゆりあんは、もう一度机に座りなおした。
パソコンを再び開いて、今度は、各大手マスコミに同様のメールをした。
宇宙人にさらわれかけたことをうったえた。
テレビ局、新聞社、週刊誌に。
そして、クマにもらった宝石を鞄に放り込むと、国立科学博物館に向かった。
ゆりあんには、そっち方面に学者の知り合いはいなかったので、頼れる相手はそれしか思いつかなかった。
博物館の人にこの宝石を渡して、これが地球上にはない石だということを調べてもらおうと思ったのだ。
博物館の受付の人は、ゆりあんの説明に戸惑ってはいたが、とりあえず、宝石を受け取ってくれた。
そこまでの仕事を済ませると、時間はもうお昼近かった。
ゆりあんは、もう一度、勤め先の会社に電話した。
「すみません。体調がよくならなくって、午後もお休みさせてください」
ゆりあんの電話を受けた人は、上司に電話をつないだ。
上司は、驚きながらも了承してくれた。
「めったに休まない君が大丈夫か?
まあ、今日はゆっくり休んでいいよ」
そのあとゆりあんは、警察に向かった。
自分の住まいの管轄の警察署だ。
そこで、昨日の宇宙人の話をし、自分の護衛をしてほしいと訴えた。
警察の人はゆりあんの話を一応はきいてはくれたが、絶対に心の中では呆れかえっているような感じだった。
ゆりあんは心配になった。
(どうしよう。
この警官、絶対、私のことを頭がおかしい人だと思ってる。
どうしよう。
他のみんなにもそう思われてたりして)
警察管は、
「そちらの付近のパトロールは強化するようにいたします」
と言ってくれただけだった。
(そりゃそうよね~)
警察署を出て、ゆりあんは落ち込んだが、でもすぐに気をとりなおした。
「大丈夫。
宇宙グマにもらった宝石が物証だわ!
じきに博物館の人が、きっとアレは地球外の物体だと証明してくれる!」
結局、その日は仕事を休んでしまったゆりあん。
家に帰ると、親戚のA子さんが送り返してくれた英文が届いていた。
ゆりあんはそれを、NASAとアメリカの政府と、アメリカ、イギリス、ドイツ、韓国、オーストラリア、インドのマスコミに送った。
ロシアや中国にも送りたかったが、それは逆に別の意味でなんかもしかしたら怖いのでやめておいた。
ゆりあんは、この日、すっかり疲れ切ってしまった。
その日は早めに寝た。
テレビも自分のSNSもネットも見ずに寝た。

次の日、会社にゆりあんが行くと、自分のデスクに座る前に、上司に呼ばれて別室に連れて行かれた。
別室の会議室に入ると、会社の医務室にいつもいる看護師さんがなぜかいた。
(え?なぜ看護師さんが?)
ゆりあんは不安になった。
上司は口を開いた。
「ゆりあん君。
君は、少し休暇を取ったらどうだ?」
「え?」
上司は言った。
「私が悪かったと思っている。
私は君たち部下に無理な過剰なノルマを押し付けていた。
それが君を疲弊させて、おかしくしてしまった」
「ど、どういうことですか?」
そこで看護師さんが口を挟んで来た。
「あなたは、精神的に追い詰められている。
少しきちんとお休みされるべきです。
会社からの無理難題に応えようとして無茶に働いて病気になってしまうなんてばかばかしいですよ。
ね!部長!」
看護師さんにそう言われて、ゆりあんの上司は、
「本当に私が悪かったと思っている」
と言った。
看護師さんも上司も、言葉を濁しながら、ゆりあんに言葉を伝えた。
二人の言いたいことは、こういうことだった。
ゆりあんは上司に押し付けられる厳しい仕事のノルマに耐えられなくなって、身体を壊している。
いや、精神の方が壊れかけつつあるんじゃないか?
明日から、一週間は休みなさい、ということだった。
ゆりあんは思った。
(ああ、私が自分の営業成績を不正に水増ししようとしていたことをやっぱりバラされたんだ?
あの人は言いつけるようなことをしない人だと思ったけど、結局部長にチクったのね?)
しかし、そうではなかった。
会議室を出て、自分のデスクに戻ると、後輩社員と、先輩社員と、ゆりあんの不正を見た同僚がゆりあんに近寄って来たのでわかった。
「どうしたんですか?
ゆりあんさん突然ツイッターで変なことつぶやきだして?
何があったんですか?」
「インスタグラム見たぞ。
ゆりあん、おまえ、どうしたんだ?
頭、おかしくなったのか?」
「ゆりあん落ち着いて。
お願いだから落ち着いて。
もうこれ以上変なことしないで!」
どうも、ゆりあんが昨日から突然にSNSで発信していることが問題視されていたみたいだった。
「私はクマ型宇宙人にさらわれました。
そして宇宙人にこんな宝石をもらいました。
同じ経験をしたことがある方、いらっしゃいますか?」
「二本足で立つリボンをした黄色いクマと、茶色いクマ、ピンクのクマの宇宙人です。
類似のクマに遭遇したことある人いませんか?」
ゆりあんが、自分の身をクマ型宇宙人から守るために発信したSNS。
それがあまりに荒唐無稽で、ゆりあんのSNSを見た知り合いの人たちから、彼女は心配されていたのだった。
ゆりあんは頭を抱えた。
(本当のことなんだってば!!!)
でも、そんなこと、急にみんなにわかってもらえるわけもない。
ゆりあんは考えた。
(いいわ。
少し待とう。
国立科学博物館からの情報を待とう。
博物館があの宝石を解析してくれれば地球外の石だと証明される。
そうすれば、私の言っていることが本当だとわかってもらえる)
しかしだった。
会社から無理やり休まされたお休み初日に、ゆりあんが国立科学博物館に電話してみると。
博物館の人は、ゆりあんにこう言った。
「ゆりあんさん。
あなたが持ち込んだ宝石の指輪は、銀座で有名な宝飾店の指輪でしたよ?
●□▲●△ってご存知でしょう?そこの指輪です。
大変高価なものです。
すぐにお返しします。
すぐに取りに来ていただけますか?」

ゆりあんは、怒り狂った。
「あのクマども~!!!
ふざけやがって!!
銀座の宝石のプレゼントを男からもらったことがない私を舐めやがって~っ!!!
何が自分たちの星にゴロゴロしてる宝石だとおっ?!」
それで、ゆりあんは、週末のクマ型宇宙人のパーティーの誘いに応じることに決めた。
土曜日に迎えに来たひろゆきと一緒に、ゆりあんは鼻息荒く、クマの宇宙船に乗り込んで行った。
「あのクマ型宇宙人ども!!私をなめんじゃねえわああ!!」
次回に続く
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