恐怖の宇宙エロぐま・地球来襲①
ちょっと弱音を吐いたら、宇宙人にさらわれた

ゆりあんは、今日、恥ずかしい失敗をしてしまった。
一口に”恥ずかしい失敗”と言っても、種類は色々あるだろう。
風の強い日に、考えもなしにサラサラした素材のミニスカでお出かけしてしまって、公衆の面前でスカートバーッ!!パンツ丸見え~!!とか、新入社員のときに、ひとケタ、桁を間違えて、発注してしまったとか。
その他に、ゆりあんにはこんな失敗もあった。
セックスに慣れていない頃、まだ膣が開発されてなかったころ。
ゆりあんは、彼氏に抱かれても、さほど気持ちいいと思ってなかった。
でも、場(?)を盛り上げるために、ゆりあんは、挿入されたときに大声をあげた。
「ああーん♡あああん!ああああん!ウうう〜ん♥」
それをその後のセックスのたびに何回か繰り返したあとに、ゆりあんは彼氏に言われた。
「あのさあ。
感じてないのに感じた演技しないでいいよ。
わざとらしくて、逆にしらけるんだよ」
********
でも今日ゆりあんが気づいたことは、これらの過去の失敗は全然いい!ということだ。
単純なミスだからだ。
恥ずかしいし、バカかもしれないけど、悪気はないからだ。
全然いい!
しかし、今回、ゆりあんは、ずるいことをしようとして、それが他人にバレてしまうという、人間としてもっとも恥ずかしい失敗をしてしまった。
自分の仕事の業績をちょっとだけ水増しさせようとして、職場のコンピューターをいじっているところを同僚に見られてしまったのだった。
一瞬、魔がさしたのだ。
こんな失敗はゆりあんは、自分でも許せない。
本来正義感の強いゆりあんは、人生上手くいってる時も、いかないときも、それを認めて受け入れて、どうどうと生きてゆくことが、自分のプライドだったはずだ。
なのに、今回、あと少しで成績で初めてトップが取れそうだと思ったとき、魔がさして、ゆりあんは卑怯なことをしようとした。
それは同僚に気づかれてしまったので、未遂で終わったわけで、処罰の対象にはならなかったが。
でも、ゆりあんがずるいことをしようとしていたことは事実だし、同僚一人にバレてしまった。
上司に言いつけられなかったことだけは恩の字でもあり、逆にそれがまたゆりあんを苦しめた。
自分はいっそ罰せられるべきだった、とゆりあんは思った。
きっとあの同僚は、心の中で、一生ゆりあんのことを人間として軽蔑し続けるだろう。
大好きな同僚だった。
ゆりあんは消えてしまいたくなった。
その夜、ベッドに入っても眠れなかった。
真夜中、ゆりあんは一人で庭に出た。
涼しい外気の中で深呼吸をして、つぶやいた。
「辛い。
タイムマシーンで一日前に戻りたい。
逃げ出したい。
記憶喪失になりたい。
死にたい・・・」
そのときだった。

空から急に強い光線の束が、ゆりあんの家の庭に向かって飛んできた。
「えええっ?!
な、なにっ?!」
次の瞬間、ゆりあんは光に包まれた。
一瞬、目の前が真っ白になった。
そして次の瞬間には、ゆりあんは、どこかの屋内にいた。
そこは、薄い地味な絨毯がひかれた、無機質っぽい部屋だった。
部屋の傍らには、デスクや椅子があった。
会社のオフィスのような雰囲気だった。
そして、驚くことに、ゆりあんの目の前には、なぜか、二本足で立った細身のクマがいた。
人間の大人の男くらいの大きさの黄色いクマだった。
黄色いクマは、首に赤いリボンをつけていた。
クマは、ゆりあんに向かって言った。
「『死にたい』なんて言うんじゃありませんよ」
ゆりあんは、腰を抜かして床に座り込んだ。
黄色いクマの後ろには、もう少し大きい茶色のクマと、もう少し小さいぽっちゃりしたピンクのクマが立っていた。
二匹のクマたちはこう言った。
「我々はタイムマシンは作れてないので、あなたを一日前には戻すことはできないんだけど」
「記憶喪失にさせる気もないけれど」
そして赤いリボンをした黄色のクマが手を差し伸べて、床に座り込んだゆりあんを立ち上がらせながら、続けた。
「あなたをお望み通り、逃げ出させてあげることはできる」
驚きのあまり、ゆりあんには、クマたちが何を言っているのか耳に入って来なかった。
ゆりあんはキョロキョロ周りを見渡した。
部屋の右の方にある窓に夜空が見えた。
窓から見える夜空は、かすかに揺れていた。
「ここは、飛行船っ?!」
と、ゆりあんは叫んだ。
小さめのぽっちゃりしたピンク色のクマは、微笑むとゆりあんに近づいて来た。
ゆりあんは一瞬ビクッとしりぞいたが、近づいてくるとピンクのクマの姿があまりに可愛らしかったので、恐怖がスッと消えた。
ピンク色のクマは、ゆりあんを部屋の窓際に誘導した。
ゆりあんが窓から下の方を見ると、ネオンがキラキラする日本の夜景が見えた。
ピンク色のクマは、ゆりあんに説明した。
「ここは、飛行船というよりも、あなたたちの星の言葉で言うと、宇宙船ですかね。
あるいは、そう・・・・・・UFOですかね?」
ゆりあんは、クマ型宇宙人のUFOに連れてこられたようだった。

宇宙船の中にある食堂に連れて行かれ、ゆりあんはケーキと紅茶を目の前にしていた。
クマたちは自己紹介をした。
黄色いクマ、茶色いクマ、ピンクのクマはゆりあんに向かって、次々に言った。
「私は、リボン博士です」
「私の名前は、クマちゃんです」
「私の名前はピンキーです」
ゆりあんは、恐怖も忘れて思わず噴き出した。
「あっはっは!あははは!!
なにソレ?おかしー」
笑いながらゆりあんは思った。
(子供のころの私がぬいぐるみにつけそうな名前!!
わかったわ。
これは私の夢なのね?
なるほどねー)
しかし夢ではなかった。
赤いリボンをした黄色いクマ、”リボン博士”は、大きな立体模型みたいなものを出して来てゆりあんに説明をはじめた。
「ここ、あなたたちの星、地球ね。
ここが太陽だとすると、我々の星は・・・・・・」
リボン博士は、天体を模した模型に浮いている星たちを指でさしながら説明していった。
よく見ると、クマの指は、本当のクマとは違った。
しっかりと人間の指、いやそれ以上に指の本数が多い、しなやかな器用そうな指をしていた。
ゆりあんは、リボン博士の説明をききながら、これは自分の夢ではないと気づいた。
リボン博士は、ゆりあんの知らないような難しいことを説明しだしたからだった。
(これは私の夢ではないわ。
だって、私のボキャブラリーにないようなワードがポンポンと出て来る)
リボン博士の説明の中で、ゆりあんの理解できた部分としては、かなり地球から遠いところからやってきたこのクマたちは、地球のことを調べているということだった。
「急に、『こんにちは』と地球にお邪魔しても受け入れてもらえるかわかりませんので、まず地球のことをお勉強させてもらおうと思いまして」
ピンキーがそこで口を挟んで来た。
「あなたはさっき、
『タイムマシーンで一日前に戻りたい。
逃げ出したい。
記憶喪失になりたい。
死にたい・・・』
と、おっしゃってました。
このあなたの望みの中で、『逃げ出したい』ということについては、我々もお手伝いできることです。
私たちの星へ逃げ出しませんか?
そこで、私たちに地球のことを教えていただきたいのです。
私たちの先生になってもらいたいのです。
私たちはうちの星に来てくれる地球人を探していたんです。
ね、ウィンウィンでしょう?」
「えええっ!!」
クマたちは、真剣な顔でゆりあんを見つめていた。
ゆりあんは慌ててクマたちに向かって言った。
「待って!待って!待ってください!
ウソです!ウソ!
ホントは私、逃げ出したくなんかないわ!!」
そこでリボン博士は、大きな茶色いクマ、”クマちゃん”にこう言った。
「お連れして」

クマちゃんが席を立って数分後、クマちゃんと共に人間が登場した。
「あ!」
ゆりあんは声をあげた。
この宇宙船には、他の人間もいたのか。
おしゃれな恰好をした、ダンディーな初老の男だった。
リボン博士は、人間の男に言った。
「ひろゆきさん。
どうか、こちらのゆりあんさんに、ご自分のことをお話してさしあげてほしいのです」
”ひろゆき”と呼ばれた初老の男は頷くと、口を開いた。
「ゆりあんさん?
新しいお仲間候補の人かな。
こんにちは、ひろゆきと申します」
ひろゆきは、ゆりあんに自分のことを語り出した。
「僕は、妻と離婚をして、子供たちと引き離されてしまいました。
僕の不貞が原因です。
子供たちも、僕とはもう会いたくないと言った。
それで離婚をして以来、子供に会えていない。
僕は、家族たちには充分なお金も家も渡した。
妻も立派な職業を持っているので、何の心配もない。
それでも、子供たちが社会人になるまでは、妻のことも子供たちのことも心配だった。
その頃は、会えない家族のことを心配していることが、僕の生きがいだった。
しかし、子供たちが社会人になった頃から、僕には生きがいがなくなった。
大人になっても子供たちは僕に会ってくれなかった。
僕自身の仕事はそこそこ順調だし、そのことで特に困ったことはない。
ただ、もうなんだか、生きがいがなくなった。
かと言って、自ら死ぬつもりもない。
このまま自然に死ぬまでは、僕はつまらない人生を淡々と続けてゆくんだろうなあと思っていた」
ひろゆきは、そこまで話をして、一旦区切った。
ひろゆきは、テーブルの上にあったコップの水を飲んだ。
クマたちは、頷きながら、ひろゆきの話を聞いていた。
(は?老年男の不倫の結末ぅ?!)
ゆりあんは、一体自分は何を聞かされているんだろうか??と思っていた。

ひろゆきは、再び口を開いた。
「そんなとき、僕は、近所の夜の河原を散歩しているときにつぶやいたのです。
『俺の人生、もう一度”生きがい”が発生することってあるのかな?』」
そんなことをつぶやいたときにひろゆきは、河原で大きな光につつまれたという。
そして、クマ型宇宙人の宇宙船に連れてこられたということだった。
ここで、ピンクの小さなぽっちゃりグマのピンキーはゆりあんに説明した。
「ひろゆきさんは、今私たちの星で地球語の教師として大活躍をされているのです。
私たちがこんなに日本語をペラペラしゃべれるのもひろゆき先生のお陰なんですよ、ゆりあんさん」
ひろゆきは、頷きながら言った。
「この人たちの星で、僕は再び、大きな生きがいを取り戻した。
まさにウィンウィンの関係ですね」
リボン博士は言った。
「しかし、我が星の日本語教師をひろゆきさんお一人に負担させては、なかなか大変で。
連日、残業をしてもらってしまって申し訳ない」
ひろゆきは、
「いえいえ、僕は”やりがい”を感じてます」
と首を振った後、ゆりあんの方を向いて言った。
「でも確かに最近きついなあと思ってるのも事実でして。
日本語の新しい教師の仲間が欲しいとは思ってます」
ゆりあんは、思った。
(ちょ、ちょ、ちょっと待ってようう!!
このひろゆきさんと私では、全然違うわよおお!
え?え?なに?なに?
じゃあ、私をクマの星に連れて帰って、日本語の教師にしようというの?
この人たち、日本語にこだわるけどさあ、じゃあ、きっとクマの星には、他にアメリカやイギリスで拉致った英語教師用の地球人とか、中国で拉致った中国語教師とか、ロシアで拉致った地球人とかもいるわけ?)
次回に続く
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