最終回・殺されたかった女④

震えるジャム山


星空をバックに赤いキャミソールのスケスケの後ろ姿

前回までの話はこちら➡殺されたかった女①    


警察は、零子の家の電話履歴とスマホの電話履歴を調べ、パソコンの復元を試みてくれると息子に言った。
しかし、パソコンの破損はひどく、もうどうにも復元は難しそうだった。
ただスマホと家電の方からは、情報が得られそうだと言ってくれた。

でも、まずは警察は、区民プールの防犯カメラの映像を手に入れた。


そして、ジャム山に警察の手が伸びた!!

零子は、ジャム山との関係はバレないように細心の注意を払っていた。

零子がジャム山と知り合った闇サイトにはパソコンでアクセスしていたのだが、パソコンは完全に破壊してあった。
ジャム山との連絡は、電話もスマホも使わないようにしていた。
プールサイドで、ふらっと会うだけだった。
ジャム山に渡した金も”タンス預金”のものだったし、零子は、ジャム山に足がつかないようにしていた。

しかしミスがあった。

零子は、つい最近区民プールのプールサイドに防犯カメラがついたことを知らなかった。
以前から区民プールの駐車場には防犯カメラがあったが、プールサイドには少し前までは、防犯カメラはなかったのだ。

そして高岸の聞きこみの努力のせいで、区民プールでジャム山が零子と会っていたことが、警察にばれてしまった。
警察は、区民プールのプールサイドの防犯カメラと、駐車場の防犯カメラに映っていた車の映像を分析して、ジャム山を割り出した。


ジャム山は、警察に任意で事情聴取された。
「最近、よくプールで零子さんに会っていたようですが、どういったご関係で?」

ジャム山は震えた。

(な、なんで疑われているんだ?
万事うまくやったはずなのに?)

しかし、警察は紳士的な態度だった。
念のためにおうかがいします、という感じだった。

警察は、区民プールに三回だけジャム山が出没したことしか知らないようだった。

闇サイトのことは、何も知らないようだった。

ジャム山は嘘をついた。
「零子さんのことはプールでナンパしようと思ったんです。
僕もここの区民ですし、あのプールをたまに利用してまして。
で、最初に声をかけたとき、零子さん別にいやな顔もしないで、一緒におしゃべりしてくれたし。
で、彼女、水曜日にいつもプールに来るって言ってたから、何回か会いに行きました。
でも、最近来なくなっちゃったのでそれ以来会えなくなってしまったのですが・・・」

ジャム山は、警察からいろいろ調べられはした。

しかし、ジャム山は祭り現場では、防犯カメラに映るようなことはしていなかった。
祭りの日も人混みに紛れていて、人がいなくなってから、零子を殺す直前までに、彼女に近づくことはしなかった。

そして、事件の当日の嘘のアリバイもしっかり作っていた。
零子に最初にもらった50万円を使って、闇の仲間に完璧なアリバイを作ってもらっていた。

警察は、それ以上ジャム山のことを疑わなかった。
ジャム山のことを調べるのをやめた。
警察の矛先は、他の男に向かっていった。


紫陽花を背景に赤いスケスケ下着


1カ月後。

ジャム山は驚いた。

全く知らない人物が、零子殺しの容疑者として逮捕されたのだった。

テレビのニュースを見て、ジャム山はひっくり返った。

零子を殺したのは、間違いなく自分だとジャム山は知っていた。
なのに、全く知らない、『愛川』という男が、零子を殺したことになっていたのだった。

「ど、どういうことなんだ?
事故死で済めばいいのに、なぜ他の人物に殺人容疑が?」

ジャム山はニュースを見てうろたえた。


それはこういうことだった。↓


警察が動き出してからすぐに、零子の息子は、途中報告を受けた。

零子の家のリビングで、刑事は息子に向かって言った。
「零子さんが、以前に頻繁に電話やメールをしていた人物がいたので、調べてみました。
愛川氏という男性です。
零子さんのお仕事の取引先相手の男性です。
以前は頻繁にやり取りしてて、その後通話記録はパタッと途絶えたのですが、事件の少し前から、そして事件の当日も、零子さんと愛川氏の通話記録がありました。
愛川氏本人は、ただの仕事の関係の間柄だと言っているのですが。
息子さん、この男をご存知ですか?
何か零子さんとの間にトラブルがあったとか、記憶ありませんか?」

零子の息子は、答えた。
「愛川さん?
う〜ん。
僕は知りません」

しかし、少し考えたあと、息子は叫んだ。

「愛川っ?!
ちょっと待ってください!」

そして息子は、刑事をリビングにおきざりにして、昔自分が使っていた部屋に向かって走って行った。

刑事は、息子の後をついていった。

息子は、自分の部屋のタンスをひっくり返しながら叫んだ。

「愛川ってなんか聞いたことあると思ったら!ここにあったような!
実は、僕、お葬式の日、下着を穿き替えたくなって、自分の昔のタンスに自分の下着が残っていないか、見たんです。
僕の下着はなかった。
でも、そのとき、AIKAWAって見た記憶がある!
あ!あった!
あ、ここにも!ここにも!」

息子のタンスからは、ローマ字で AIKAWAと刺繍されたハンカチや、靴下が出て来た。

警察は零子の家を詳しく調べることにした。

すると、家のあちこちに『AIKAWA印』の男物のグッズが見つかった。
またコンドームの箱が見つかった。
箱には、『零子♡愛川』と書いてあった。

警察は、愛川のことをもう少し調べるし、もう一度事故現場を調べてみてくれると、息子に約束した。


赤いスケスケの下着で体育座りしている横向き


零子と以前付き合っていたらしき愛川という男は、容疑者として警察にしょっぴかれた。

愛川が、祭りの日に、祭り会場の防犯カメラにうつっていたことがわかったのだ。

また警察の聞きこみにより、祭り会場付近で愛川に似た人物を見たと言う人の情報も得た。
愛川の写真を見て、この街の住人は言った。
「なんか御神輿も見ないで、一人で、変な場所にずっと突っ立って、イライラしてた男の人に似ているわね」


そして一番の決め手は、零子の血痕がついた、AIKAWAの刺繍の入ったハンカチが、祭り会場付近の深い草むらの中から発見されたことだった。


愛川は、警察に向かって釈明をした。
「私は、あの日、突然、彼女に呼び出されたんだっ!!
でも待ち合わせ場所に行っても零子はいなくって、ずーっと待っていても結局会えなかったんだ!
信じてください!
以前に彼女とつきあってたのは、認めます。
すいません!
その点はウソついてました!
つきあってたのは認めます。
確かにそのハンカチも僕のものですが、昔、彼女の家に残してきたものだ。
でも、その他のAIKAWA印のグッズたちには身に覚えがない!
コンドームも知らない!
そして何より、もうとっくに彼女とは別れているんです!
彼女のことは、確かにヒドイ目に合わせました。
妊娠させたり、結婚を匂わせておいて仕事を変えさせたりもしました。
でも私は、決して殺してはいない!!
少し前にも、7月にも僕が彼女に何回か電話したのは、電話くれって伝言が会社に残ってて、仕事の話かと思って何度か電話をしていただけです!!
おかしい!
おかしい!
祭りの日は、彼女に呼び出されたんですっ!!
僕から祭りに彼女を誘ったなんてそんなの嘘です!
これは罠だっ!」

警察は冷静に言った。
「どっちが呼び出したのかなんか、さほど関係ない。
とにかくお前は、彼女に会ってカッとしてやったんだろ?!


祭り会場そばの草むらから見つかった零子の血痕の付いたハンカチに付着していた皮膚の皮と、愛川のDNAは一致した。


*********


本当に零子を殺した当事者のジャム山は、テレビのワイドショーで、そのことを詳しく知った。

「当初、零子さんはお祭り会場の人波みに押されて転んで亡くなった事故死と思われたのですが、実は、愛川に殺されたということがわかりました。
妻子のある愛川は、愛人の零子さんと揉めていたようです。
愛川は、あの大混雑することで有名なお祭り会場に零子さんを呼び出し、人混みに紛れて彼女を殺したようです。
祭り会場から300メートル離れた土手の草むらで、零子さんの血痕がついたハンカチが発見され、そこからは愛川のDNAも確認されました」


ジャム山はテレビの前で叫んだ。
「何がどうしてこうなった?!」



ジャム山はしばらく考えた。


零子が、自分を捨てた男・愛川を殺人犯に仕立て上げてて復讐するためにジャム山を利用したのだったと気づくのに時間がかかった。

ジャム山はそのことに気づくと怯えた。
今まで闇サイトで会った依頼人の中で、実は零子が一番恐ろしい、かつ悲しい依頼人だったと認識した。


一方、高岸と零子の息子は、零子が事故死したのではなく他人に殺されたという事実にはとても悲しんだ。

しかし、『自分たちが憎き犯人を捕まえたんだ!』という、別の意味でのとても強い満足感があったので、二人の心の中ではケジメがついていた。



終わり



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