生き残った三軍選手たち⑳
知らないうちに、なんだかわからない組織の地雷を踏んでた?

前回までの話➡生き残った三軍選手たち① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩ ⑪ ⑫ ⑬ ⑭ ⑮ ⑯ ⑰ ⑱ ⑲
国の北西部の山、南東部の山、南部の山が噴火し、人工物と混じわった。
その結果、有毒ガスが生成されて、なぜか、国民の中の①トップレベルのスポーツマン、②トップレベルの美人、③トップレベルの美声の持ち主たちが亡くなってしまった。
*******
ドウリョウさんは、時々、趣味でハッキングをしていた。
警察のシステムに乗り込んだり、国のシステムに乗り込んで、中を眺めたりしていた。
でもドウリョウさんにとって、それのシステムの中には興味をそそられるものはなかった。
というか、メンドクサイことや、難しい言葉使いや、難しい漢字で難しいことが書かれたりしてて、よく内容がわからなかった。
ライバル会社のシステムにも一度侵入してみたことはあったが、そっちも彼にとっては興味のない内容だった。
新商品の情報とか、ドウリョウさんにとってはあまり興味のないものだった。
「うちの会社のマーケティング部門や営業部門の人が見たらいい情報なのかもしれないけど、僕には興味ない」
海外のサーバーにアクセスしたこともあったが、アクセスしたとて、外国語もそれほど出来ないドウリョウさんには、もっと解読が難しい言葉や文章の羅列としてしか見られなかった。
海外の大きな動物園のコンピューターシステムに侵入したときだけは、少し面白かった。
でもたびたび見るうちに飽きたのでやめた。
じゃあ植物園や、水族館なども面白いかもと思って見に行ったが、まあ、これも直に飽きた。
そんな中、オズボーンとシステム女子が持って来た、桜田さんのプランこそ、大いに興味深くて楽しいものだった。
「うちの研究所の警備システムを乗っ取る?
実に面白い!」
ドウリョウさんは、研究所の監視カメラを乗っ取り、過去の日の録画映像を流すことに成功した。
しかし、途中の急な計画変更にあわてて、テンパってしまって、自分が隠し持っていたシステム女子の映像を流してしまったわけだが。
監禁された合宿所のそばのビジネスホテルで、ドウリョウさんは尋問された。
システム女子の兄だと思っていた人は、急に冷たい口調で、詰問してきた。
「あなたは、うちのコンピューターシステムに潜入して何を調べたんですか?
どこまで知っているんですか?
また、誰の命令でそれをやっていたんですか?
それを全て答えてもらいましょう」
ドウリョウさんは言った。
「ごめんなさい!
どちら様の話ですか?」
他の男が怒鳴った。
「しらばっくれるんじゃない!!」
ドウリョウさんは、怯えながら、正直に言った。
「ごめんなさい。ごめんなさい。
はっきり言ってホントにわからないんです。
僕、今まで趣味で、ほんっとに色んなところのシステムに侵入してきたので!
あなたたちは、一体どちら様ですか?」
もう一人の男が、ビジネスホテルの壁を思い切り叩いた。
「ふざけるなッ!!」
「ヒエッ!!」
ドウリョウさんは、思いついたことを慌てて言った。
「あ!ああ!
わかった!
×◎△さんですか?
うちライバル会社の×◎△社さん??
ご、ごめんなさい!
一回だけアクセスしたことはあるんですが、情報はどこにも流してません!
僕、興味なかったし、マーケ部にも営業部にも友達いないし!」
男は怒鳴った。
「×◎△社なんか知るかっ?!
いい加減にしろッ!」
システム女子の兄を名乗っていた人は、恐ろしい顔で静かにこう言った。
「あなた、なかなか食わせ物ですね」
ドウリョウさんは震えた。
(違いますッ!!そんなんじゃないんです~!!)

(場面変わって)
桜田さんの家に急ぐオズボーンは、桜田さんの家の最寄りの駅の人混みをかき分けた。
しかしオズボーンは、駅前の広場で思わず足を止めた。
広場に、システム女子にそっくりなメガネをかけた女性が立っていたのだ。
近づくとそれほど似ていなかったし、システム女子より若そうだったが、雰囲気はとてもシステム女子に似ていた。
(へえ〜)
とオズボーンは、急いでいることも忘れて、その女性を見つめた。
すると、そこに身体の大きな男と、ダブダブのワンピースを着た女性がやってきた。
妊婦さんだろうか?お腹はまだ出ていないけど。
(あっ。あの男は確か?
どっかの球団の選手じゃなかったっけ?
どこだか忘れたが。
確か、山村だっけか)
と、オズボーンは思った。
オズボーンが見ていると、メガネの女性がはしゃぎながら男に向かって話す声が聞こえた。
「お兄ちゃーん。
私、若くしてもうおばちゃんになっちゃうわけえ?」
選手と一緒に来た妊婦さんは、笑いながら、
「安心して。
うちの子にはあなたのことをおばちゃんって呼ばせないように教育するわ」
と言った。
メガネの女性は、妊婦さんに向かって言った。
「約束ですよう〜!ビビさん」
********
(桜田さんの家)
オズボーンがやっと到着したときに総務部長は叱った。
「君も合宿をさぼったのかっ?!」
でもオズボーンは嘘を言った。
「いえいえ。僕は、もう研修は終わりだったんですよ。
僕は短期研修だったんですよ。
御社と違って、我が警備会社は貧乏ですからね。
僕の研修なんかにそんなに多くの日数を使ってくれませんよう」
桜田さんの家のリビングルームで、皆で資料を調べた。
段ボールの中身や、研究所所長室にあったメモ書きについては、総務部長と所長秘書と、桜田さんの旦那さんが担当した。
社長のメールや重役のメールや研究所所長のメールは、オズボーンとシステム女子と桜田さんがひとつひとつ読み直していた。
一時間ほど作業をしたあと、もう飽き飽きした秘書が言った。
「ああん!
こっちにはゴルフ賭博の話しか出てこないわよ~
私もオズボーンちゃんたちが見てるそっちを見たいわあ」
桜田さんの旦那さんは、秘書のその言葉に、手を止めた。
そして言った。
「そうですかあ?
ゴルフ賭博以外の色々興味深い話もあったじゃないか?
君は見てて気づかなかった?
僕はたくさん変なことに気づいたよ」
桜田さんの旦那さんの言葉に総務部長は頷いた。
オズボーンとシステム女子は、桜田さんの旦那さんと総務部長に向かって、興奮気味に、
「何?何?」
「何ですか?何か見つかりましたかっ!」
と叫んだ。
桜田さんの旦那さんは、
「研究所所長の英語のメモ書きをたくさん見つけたんですけど、これ全部、取り引き先におねだりして、ビンゴゲーム大会の景品をゲットしたことをメモったやつみたいだよ」
と、言い、総務部長は、
「段ボールの底にたくさん新品のボールペンや消しゴムや、蛍光ペンがあった。
これ、会社の備品の横領だな」
と言った。
オズボーンとシステム女子は、ガッカリした。

「少し休憩しましょうかあ?
ケーキまだあったでしょ?僕、紅茶入れてきます」
桜田さんの旦那さんはそう言うと、立ち上がった。
そして、お茶を入れにキッチンの方に向かった。
総務部長は、一息つきながら、オズボーンに向かってたずねた。
「オズボーン君たちは、一体、何を見てるんだい?」
まさか盗んだ社長や所長のメールを見ているとは言えなかった。
それにオズボーンたちが見ている膨大なメールの中身にも、ゴルフ賭博の話しか見つけられなかった。
社長と研究所所長が、かなり、取り巻きたちや取引き先さんや、社員たちにゴルフ賭博を無理じいしてノリノリでやっていることだけはよくわかったが。
でもどちらの資料にも、ドウリョウさんが社長たちの指示を受けて、ライバル会社のハッキングをしていたということを示すものも何もなかった。
「フリーライターはやっぱり私にウソをついていた?」
「ドウリョウさんが心配だ」
システム女子とオズボーンは、総務部長に訴えた。
「やっぱりフリーライターはおかしいんです」
「あとは何ごともない!
うちの会社にもドウリョウさんにも悪いことは何もない」
桜田さんと総務部長は、
「何もないじゃないでしょ?ゴルフ賭博があったでしょ?」
「備品の横領もあったでしょ!」
と怒った。
オズボーンとシステム女子は、総務部長に向かって、もう一度詳しくフリーライターの話やドウリョウさんが姿を消した状況を説明した。
オズボーンは必死でうったえた。
「僕はイヤな予感がしてならないのです。
ドウリョウさんがどうしてるのか心配なんです」
「う~ん?私はただのエスケープだと思うけどねえ」
と総務部長は言った。
「そんな!総務部長!助けてください。
こういうのってすぐには警察も相手にしてくれないみたいなんです」
秘書さんが、オズボーンの後押しをしてくれた。
「総務ぶちょお~。助けてあげてよお」
と、甘えた声で言った。
そのときだった。
「こんなのあったあ!!」
と大きな声で桜田さんの旦那さんが叫んだ。
桜田さんの旦那さんは紅茶を入れに行ったと思ったのに、いつの間にか戻ってきて、パソコンでメールの方を見ていた。
「あ!それは見ちゃ・・・」
と、システム女子は言いかけた。
桜田さんの旦那さんは構わず続けた。
「これ、ドウリョウさんの上司の人と、本社の人のメールだと思うよ?」
みんな、パソコンの周りに集まった。
そこに書いてあった内容は、本社の佐藤本部長という重役が、システム部長に宛てたものだった。
『昨日はお疲れ様。
久しぶりに楽しかったね。
美味かったな。あの店。
ところで、昨日、チラッと言ったことだけどくれぐれも忘れずに頼むよ。
君、随分酔ってたから忘れちゃうと困るから。
君のところのドウリョウ君に注意しておいてくれよ。
あんまり変な悪戯はしない方がいいって。
僕の友人の経営するネットサイトに入り込んで、ドウリョウ君は、変なことしてたんだって。
僕の友人のネットの内容は、大喜利とかふざけたことをやってるだけだし、別に大きな実害はなかったし、ドウリョウがうちの社員だとわかったので、出入り禁止で済ませて、こっそり僕に注意してくれたんだけど、他のところでもドウリョウ君はこんなことやってるんじゃないかと想像すると、少し心配なんだよ』
皆は、顔を見合わせた。
秘書さんは、けしかけるように言った。
「総務ぶちょお!」
総務部長は決断した。
「よし!今から手分けして、警察に通報&システム部長と佐藤本部長に確認&合宿所の周辺の聞き込みに向かうぞ!!」

(場面変わって再び研修合宿所そばのビジネスホテル)
ドウリョウさんを拉致った男の一人が、電話で誰かと話を始めた。
外国語で話していた。
外国語に疎いドウリョウさんは一生懸命、考えた。
(この外国語ってどこの国だっけ?
え~っと、確か・・・)
思いついたドウリョウさんは叫んだ。
「あっ!!
ローズ語かっ!!
ローズ国かっ!?」
男たちがドウリョウさんの方を見た。
ドウリョウさんは、
「ああ!
わかった!
もしかして、あなたたちローズ国の動物園さんですね?
すいません、すいません。
確かに、ローズ国の動物園さんは面白かったので、僕、一時期ハマッてました。
でも信じてください。
バックヤードの映像とか、エサを出す特殊な機械を眺めて楽しんでいただけなんです!
信じてください!あのエサやり機の技術の秘密を盗もうとしていたわけではないんです!」
と説明した。
システム女子の兄を名乗っていた男は、頭を振った。
そして、仲間たちに向かって言った。
「この人、本当にただの素人なんじゃないでしょうか?
何の目的もなく、あちこちの色んなシステムに侵入しているだけの?」
もう一人の男は残念そうに言った。
「なんだよ~。
せっかく手柄をあげたと思ったのに、もう~!
雑魚を釣っちまったのかよおおお」
と言った。
ドウリョウさんは、その『雑魚』というワードにちょっとだけピリッとした。
もう一人の男は、
「まあ、がっかりすんなよ。
だったら、何も調べずに本国に送るだけだろ。
それで俺たちのお仕事は終わりだ。
俺はそっちの方が楽な仕事でいいと思ってる」
と言った。
(え?)
ドウリョウさんは震えあがった。
(この人たちは、何の組織の人なのかわからないけど、このままだと僕はローズ国に送られる?)
ドウリョウさんは、どうも当初はサイバー犯罪者だと疑われていたようだったけど、そうではなかったザコ?だとわかってもらえた?ようだった。
でも、そうだとしたら、もしかしたらあとはローズ国に連れて行かれて消されるだけ?
ドウリョウさんは全力で考えた。
どうしたら自分は助かるのか?
システム女子の兄を名乗っていた男は言った。
「じゃ、すぐに次の部隊に引き渡しましょう。私たちの仕事は終わりです」
(ひえええ!)
ドウリョウさんは、頭をフル回転させた。
(どうしよう。どうしよう)
男たちは、あわただしく動き出した。
ビジネスホテルにあった荷物をまとめたり、そこらへんを片付けたり、あちこちを布で拭いて、指紋を拭きとったりしているのか?すっかり、退散モードだ。
そして一人がどこかにまた電話をしていた。
今度は外国語ではなかった。
「ドウリョウに似ているやつ見つかったか?
そう!撤収、撤収なのよ。
そうか。
パスポートは作れた?
そう。
じゃあ、空港そばで落ち合おう」
そして、もう一人の男が、鞄の中から、注射器のようなものを出して来た。
「さ、おねんねよ~」
と言ってドウリョウさんに近づいてきた。
「ひええええ!どういうことですか?」
「あんたは箱に入って、荷物として出国する。
あんたのそっくりさんが、楽しそうに海外旅行に行く写真を撮る」
(どうしよう?!)

ドウリョウさんは、一世一代の芝居を打つことにした。
ドウリョウさんは力をふりしぼった。
油汗を流しながら、無理やり、不適な笑顔を作った。
そして、かました。
「ふふふ。
僕が突然この国からいなくなったら、うちの組織の者が動き出すぞ。
そういう手筈になっているんだ。
ふふ。
僕が、もしあなたたちの国に出国したら、その途端にうちの組織が、警察と国とマスコミに通報し、マスコミは君たちの犯罪をぶちまける段取りになっているんだ」
さっき、『雑魚(ザコ)』呼ばわりされたことも、どこか心の片隅に残っててドウリョウさんは、思いっきりかました!
システム女子の兄を名乗っていた男は言った。
「白状しましたな。
やっぱりな。
あなたの組織の親玉は誰ですか?
教えてください!
言わなければ、今すぐ、こちらで拷問を開始します!!」
もう一人の男が、また別のところに電話をかけ始めた。
「SMのデリヘル嬢の手配してくれ。
そう、ハードなやつ。
ベッドで縄で首を縛り過ぎて間違って死なせるやつ」
次回に続く
➡生き残った三軍選手たち㉑ ㉒ ㉓ ㉔

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