生き残った三軍選手たち⑬
研究所の不正とは?!

前回までの話➡生き残った三軍選手たち① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩ ⑪ ⑫
国の北西部の山、南東部の山、南部の山が噴火し、人工物と混じわった。
その結果、有毒ガスが生成されて、なぜか、国民の中の①トップレベルのスポーツマン、②トップレベルの美人、③トップレベルの美声の持ち主たちが亡くなってしまった。
世間のネット民の中の一部には、火山のそばにある研究所が毒ガス生成に関わっているんじゃないかと噂する人もいた。
北西部の火山のそばの研究所で働く人たちが、この企業の不正を暴こうとしていた。
そのメンバーは5人。
本業は三流漫画家で、研究所で警備のバイトをしているオズボーン。
研究所の研究職の桜田さん。
研究所のシステム系女子。
研究所のシステム男子のドウリョウさん。
研究所の所長の秘書。
*********
プロ野球アナコンダズ三軍出身の山村投手は、一軍に上がってから少しずつ少しずつ実績を上げていった。
毒ガス火山のせいで、学校の先生が亡くなったり、好きだったアナコンダズの一軍の犬田投手が亡くなってしまったりして、一時期落ち込んでいたタケシ君もだんだん元気になっていった。
以前はやや”しまり屋”だったご両親も、タケシ君が元気になるならいいと、野球を見に行きたいと言えば行かせてくれるようになった。
ご両親が忙しいときは、ビビちゃんが保護者代わりとして一緒に球場に行ってくれるし。
アナコンダズが次にホームに戻ってきたときの休日、タケシ君とビビちゃんはまた一緒にスタジアムに試合を見に行った。
二人は球場で、試合開始前の練習を見ながら、ビビの作ってきたお弁当を食べた。
「タケシ君。たびたび試合見に来るのおこづかいも大変でしょ?
たまには節約した方がいいと思ってお弁当作って来たの」
そうだった。タケシ君のおうちの掟では、試合観戦のチケット代はご両親が出してくれるけど、交通費と球場での飲み食いはタケシ君のお小遣いで賄う約束だった。
唐揚げと、多種多様な色とりどりのおにぎり。
ビビのお弁当はメチャクチャ美味しかった。
「美味し〜い!!」
タケシ君は叫んだ。
「今までお母さんの作る唐揚げが日本一だと思ってたけど、ビビさんそれ以上だああ!」
「そう?」
ビビは笑った。
「うん!あとおにぎりもすごい綺麗!
こんな色んなおにぎり見たことないよ!」
「ふふ。
タケシ君に喜んでもらえてよかった。
頑張った甲斐があったわ」
そして、ビビの作って来たおにぎりの三つめを頬張りながら、タケシ君は言った。
「そう言えばさ、お母さんは気づいてないみたいだから、僕は内緒にしてるんだ」
ビビは、サーモス水筒に入れて来た冷たい”フルーツ&野菜ジュース”をマグカップに注ぎながら、タケシ君にきいた。
「内緒って?なにを?」
「ビビさんが酔っぱらったときに迎えに来たのが山村だったってこと」
ビビは真っ赤になった。
「そ、その切はごめんなさい。
恥ずかしい姿を見せてしまって」
「ううん。
それはビビさんにワインをたくさん飲ませたうちのお母さんが悪いんだから」
タケシ君は、言った。
「うちのお母さん、おしゃべりだから山村が迎えに来たことは内緒にしたんだ。
お父さんにも内緒にしてる」
ビビは相変わらず顔を真っ赤にしたままタケシ君の話をきいた。
「ビビさん、週刊誌やネットには気をつけてね」
「週刊誌?」
タケシ君は声を潜めて言った。
「山村にも注意しといてね。
ビビさんとの写真を撮られないようにね」
ビビちゃんは相変わらず真っ赤な顔で言った。
「そ、そんな!まだまだ世間に注目されるような選手じゃないから大丈夫よ」

(場面変わって)
北西の研究所のそばの居酒屋の個室では大騒ぎになっていた。
オズボーンとドウリョウさんは、コンプライアンス研修中で不在だったが、桜田さん、システム系女子、秘書が集まっていた。
システム系女子と秘書は、桜田さんの中間報告に驚いていた。
「うちの会社の不正って『賭けゴルフ』のことだったの?!」
「ウソでしょうっ?!」
「いつそんな話になった?!」
「なんだそれ?!」
システム女子と秘書は代わる代わる、桜田さんを口々に責めた。
桜田さんが、自分が消されるかもしれないと言っていた、この会社の不正とは、”社員たちの賭けゴルフ”のことだったのだった。
桜田さんは、警備のオズボーン、システム系の女子とドウリョウさん、研究所所長秘書までを巻き込んで、社長のメールや、所長のメールを盗んだり、書類を研究所外に持ち出すことに成功した。
それは全て、社員の賭けゴルフ疑惑を暴くためだったという。
システム女子と秘書は言った。
「ふざけないでよ!!」
「え?」
と桜田さんは不思議そうな話をした。
システム女子は怒りの顔で、桜田さんに詰め寄った。
「あなた、火山の毒ガスの話だって言ったじゃないですかっ?!」
桜田さんは、
「そんなこと言ってないでしょ?
私、最初からの賭博の話だって言ってたでしょ?」
と言った。
「はあっ?」
とシステム系女子は言った。
「あなたはネット民がちらっと言ってた火山噴火の毒ガスにうちの会社が関わっていたってことを追及しているってきいてたわよ。
私はオズボーンからそう聞いてたわよ?」
そうシステム系女子は言った。
しかしだった。
桜田さんは、
「オズボーンさんが言ってた、うちの会社にまつわるネット民の噂って、私が知ってたネット民の噂とは違うものなのかしら?」
と言った。
実は、ネット民たちの噂話にも、『火山のそばの研究所が毒ガスに関わっている』という話はあったが、同じ時期に別の噂もあったのだった。
オズボーンは、ネットの無料掲示板『100ちゃんねる』や、一部のツイッターを見て、『火山毒ガスは研究所の陰謀』という話を見たのだが、桜田さんが言っていたのはそのことではなかった。

桜田さんは、『100ちゃんねる』とはまた別の、女性限定の無料掲示板『BABAAちゃんねる』にて、この企業の研究所の噂を目にしていた。
その掲示板では女性たちが、
『うちの会社、パワハラが今だにすごいよ~』
とか、
『私の会社は若いコには普通にセクハラあるよ』
とか、
『私は派遣先で、契約と違う仕事させられています』
とか、
『銀行員です。5年前に横領した社員がいましたが、警察にも突き出さずに社内で処理してた』
とか、
『私がバイトしてる飲食店、炊飯器に入れっぱなしになってて、からっからとかになったご飯とか客によく出してるよ』
とか、
『私は医者だけど、昔の同僚にご遺体の脳みそを出して遊んでいるヤツがいた』
などと、人々が、自分の勤め先や、自分のコミュニティでのコンプライアンス違反?法律違反?不正?モラルハザードなどをぶっちゃけていた。
1000くらいある無料掲示板のそれらの発言を飛ばし飛ばし読んでいるときに、桜田さんは、一つの発言に目を止めた。
『ナンバー120さん!
ここで会社名出しちゃダメだよ!
無料掲示板であっても、あなたの言うことが真実であってもウソであっても名誉棄損で会社側に訴えられるよ!
すぐに消しな!』
桜田さんは、”ナンバー120さん”の発言を探して見た。
ナンバー120さんは、桜田さんの勤めるこの会社の不正について、会社名まで出してしまって書いていた。
『この会社、頻繁にゴルフ賭博やってるよ。
社長と北西研究所の所長が特に好きだね』
これを見て桜田さんはガッツポーズしたそうだ
桜田さんも実は、以前からゴルフ賭博のことを気にしていた。
この会社の社員の一部は、週末にゴルフコンペによく行く。
そしてそのときに、誰が優勝するかなどの賭けをしていた。
その賭博には、ゴルフをやらない社員さんたちまでが巻き込まれていることを桜田さんは薄々感づいていた。
その社員さんたちは大変困っているという噂もあった。
この不正をただしてやろうと思って桜田さんは立ち上がったのだった。
システム女子は、怒り狂った。
「たかがゴルフの賭けとばくを暴くために桜田さんは頑張っていたの?
そんなつまらないことで、オズボーンもドウリョウさんもクビになりそうなハメになってたの?
そして、こんなつまらん結末、漫画に描いてもオズボーンはブレークできないよう。
火山ガスのことかと思っていたから私だって色々協力したのに!!
ふざけんじゃないわよ!!」
秘書さんもガックリしていた。
「そんな小さな問題ごときのために、私は、じじいとねたの?
ちょっと勘弁してよううう!
”大企業の大きな闇を暴く女スパイ”のつもりで頑張ってたのに!!」
しかし桜田さんは、二人の言葉に逆切れした。
「何言っているのよ!あなたたち!
考えなさい!
これは大変な問題なのよ!!
賭けゴルフが、法律的にダメとかそういう問題だけじゃないのよ?
ゴルフもしないし、罪のない、中には安月給の多くの社員たちが、無理やりゴルフ賭博に参加させられてきた歴史がこの会社にはあるのよ!!
これが大問題でなくって何が大問題なのよう!」
(そ、そりゃそうかもしれんけどさあ・・・・・・)
システム女子と秘書さんは、もう疲れ切って桜田さんに向かって何も言わなかった。
二人が黙ってしまったので、桜田さんはエキサイトして語った。
「今回、わかったわ。
主に文系の男女社員が被害にあっている。
そして出入りしているお取引先さまも。
理系の女性社員には絶対に話が来なかったから、私には証拠がつかみきれてなかったんだけど。
今回証拠を掴んだわ。
週末にゴルフコンペのあるときは、週の初めからメールが回ってくるそうなのよ。
そこには、手作りの競馬新聞みたいなエクセルの表がついてて、本命とか、大穴とかオッズも書いてあるの。
『馬券買ってね。一枚500円』
との言葉とともに。
そして週の真ん中あたりになっても馬券を買わない社員がいると、上司たちにプレッシャーをかけられる。
善良な社員たち、お取引き様は、強要されて、ゴルフ賭博に参加しろ!と脅されてきたのよ。
『会社の士気を上げるために、これは大事なことなんだ!
なぜ君は賭けないのだ?』
なんて言われてさ!!
ゴルフに一つも興味ない多くの人たちが、少数の人たちが週末にやるゴルフコンペを盛り上げることにつき合わされてきたのよっ!
ひどいことでしょ?」
(ああ、もう〜。わかった、わかった・・・・・・)
システム系女子と秘書は、ガックリしながら桜田さんから視線を外して、居酒屋の窓の外の景色をぼんやりと眺めた。

(場面変わって)
ビビちゃんに週刊誌やネットに気をつけろと言ったタケシ君だったが、遅かったようだ。
でもタケシ君が心配していたこと『ビビと山村がつき合っていることが世間にバレた』わけではなかった。
もっと悪い形だった。
『山村さんは過去、私の身体を何度も弄びました』
SNS上に、そんなことを書く女性が出現したのだった。
『彼は気が向いたときにだけ私を抱きに来ました。
好きなのはバック。
しかも立ちバックが好きというちょっと変わり者でしたねw
あとシックスナインもw』
タケシ君はショックを受けた。
でも、彼も思春期。
ショックを受けながらも少し勃起してしまった自分をタケシ君は恥じた。
タケシ君は、(山村とビビさんもセックスをしているんだろうか?そりゃしてるよな?)とチラッと考えて、その様子を想像しそうになったのを慌てて止めた。
タケシ君は、(だめだ、だめだ。ビビさんのエッチシーンを想像しちゃダメだ!)と、頭を振った。
しかし、
(ちなみにシックスナインってどうやるんだろう?苦しくないのかな?)
とりあえずタケシ君は、ネットで、立ちバックやシックスナインの映像を探して、見知らぬ女優さんをオカズにとりあえずオナニーをしてさっぱりした。
一回スッキリすると心配になってくるのは、山村の評判が落ちるのではないかということと、ビビと山村が喧嘩していないか?という心配だった。
この女性のネットの発信により、アナコンダズのコアなファンたちは本の少しだけザワついたし、ライバルチームのファンらにからかわれたり、ヤジられたりしたが、でも、いわゆる世間一般の人たちは別に気にしなかった。
アナコンダズも山村も、野球ファン以外の人にとっては、あまりメジャーな存在ではなかったからだ。
タケシ君は、少し安心した。
ただ、ビビのことが心配だった。
次にアナコンダズの野球観戦にLINEで誘ったとき、ビビは断ってきたし。
「ごめんね。タケシ君。
私、その日は用事があって行けないの」
タケシ君は、自分の今月のお小遣いの残高を確認してから、ビビちゃんに電話を掛けなおした。
「ビビさん、次の土曜日にする?
スーパーキャッツ戦があるよ。
ネコ球場は少し遠いけど、行けない距離じゃないでしょ?」
「ご、ごめんね。
その次の週もダメなんだ」
電話でのビビちゃんはとても元気がなかった。
タケシ君は悲しくなった。
そしてとても寂しくなった。
せっかく仲よくなれた大人の友だち、ビビを失うような気がした。

世間があんまり反応しないもので、山村との過去の情事を告白していたネットの女性の発言はもっと過激になっていった。
『私、山村選手には結婚を匂わされたこともあるわ。
そのときは私にその気がなかったので、断ったけど。
その日は、彼は狂ったように私を抱いたわw。
その日、私は無理やり押し倒されて、服をはぎ取られて、両脚を掴まれて大股開きにされて・・・・・・』
タケシ君はブチ切れた。
「なんだ、この女!
ビビさんがこれを見たらどう思うんだろうっ?」
でも、タケシ君はまたオナニーをしてしまった。
頭ではこの女に対して怒っていても、下半身がどうにも言うことをきかなかった。
スッキリしたあと、タケシ君は行動に出た。
********
『アナコンダズ山村の本命の彼女は料理上手な個性派美人』
次の週、週刊誌に山村とビビちゃんの記事が出たのだった。
それは小さな小さな記事だったし、多分、一般の人たちは気にもしなそうな記事だったが、一応写真も出ていた。
タケシ君は、”レストラン・アマゾン”で、山村がヘロヘロになったビビちゃんを抱きおこす写真をこっそり撮っていた。
何枚か撮った中で、奇跡的にビビちゃんがシャキッとした姿勢になっているように見えた写真をセレクトして週刊誌に流した。
そして、二人がタクシーに乗り込む姿も一枚撮影していた。
また、球場で笑ってピースサインをしているビビの真正面からの写真もタケシ君は週刊誌に提供した。
記事にはこうあった。
~~週刊誌の記事抜粋~~
知人男性談『山村選手の本命は、この彼女ですよ。彼女は、とても性格がよく世話好きで、料理も抜群に上手いし、栄養面の知識もあるし、経済観念もしっかりしているし、とても素晴らしい女性です。山村には彼女みたいなしっかりした人がついていたら体調管理などの面からしても安心だ。もしも彼女を選ばなっかたら、山村はマズイね。また三軍に逆戻りだね』
このように知人男性は語った~~
ちなみに”知人男性”というのはタケシ君のことだ。
次回に続く
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