生き残った三軍選手たち⑭

シス女の冒険


M字開脚3

前回までの話➡生き残った三軍選手たち①                         


国の北西部の山、南東部の山、南部の山が噴火し、人工物と混じわった。
その結果、有毒ガスが生成されて、なぜか、国民の中の①トップレベルのスポーツマン、②トップレベルの美人、③トップレベルの美声の持ち主たちが亡くなってしまった。


********

桜田さんが探っていた会社の不正問題は、火山ガスのことではなかった。
桜田さんが命をかけて(?)まで追っていた問題は、この会社の『ゴルフ賭博』のことだった。

そのスケールの小ささに、システム系女子と秘書はガッカリした。

そのころ、コンプライアンス研修合宿にぶち込まれていたオズボーンとドウリョウさん。
オズボーンは合宿所から毎日、システム系女子にメールした。

『会えなくってさびしいよ。システム女子ちゃん。
ところで火山ガスの問題どうなった?
桜田さんは、何かわかったって言ってる?
桜田さんや君の身には何か危険が迫っていないかい?
離れていると心配でしょうがないよ』

オズボーンは、まだ、緊迫感にあふれていた。
そして、この会社の大きな不正を暴くという壮大なストーリーの漫画の構想に夢中なんだろう。

システム女子は、オズボーンには、本当のことについて伝えられなかった。
「気の毒過ぎて今はとても教えられないわ」

ある日の仕事の帰り道、駅に向かう途中で、システム女子はまたオズボーンのメールに気が付いた。
いつも通勤に使っている小さな赤い車は車検に出していたので、この日は乗って来ていなかった。
この日は、歩いての通勤だった。

『システム女子ちゃん、何か動きあった?
今、僕は休憩時間なんだ。
これまで起こったことをネームにして書きはじめているんだよ』

女子は、適当なことを書いてオズボーンにメールを返信した。

「あ~あ!!
困ったわあ!
いつオズボーンに本当のことを教えたらいいのかしら?」

道端でシステム女子は頭を左右に振った。
そのときに、自分の後方5メートルくらいの道路上に、怪しい男が立ってこっちを見ていることに気づいた。

システム女子は思い出した。
いつか、自分を尾行していた男だった。

(そういえば、私を追っていた週刊誌だか、フリライターだかは一体何を追っていたのか?
最初は、うちの会社の”逆・セクハラ問題”のことかと思ったわ。
次に火山ガスの問題かと思った。
でもそれも違うんでしょ?
ましてや、”ゴルフ賭博”などのチンケなネタであるわけないだろう?)

システム女子は腹を決めた。

女子はクルッと後ろを向くと、カツカツと一直線に男に向かって歩いて行った。

男は一瞬びびったようだった。
一瞬、逃げ出す構えをした。
しかしシステム女子は、男にどんどんと近づいて行った。

そして男に向かって大声で叫んだ。
「待ちなさい!!
正々堂々とお話ししましょう?
一体あなたは、何を探っているのっ?!」


後ろ向きの四つん這い


(場面変わって)

所属していた名だたる女優さんや歌手が、火山ガスで亡くなってしまった芸能事務所の社長。

社長は、会社のスタッフを半分に減らし、必死で新しいスター候補たちをスカウトをしまくって、生き残った整形美人タレントA子ちゃんと一緒に頑張っていた。

大女優・故・マキマキ子から引き取って大事に育てた真紀は、遠くの地、ローカル芸能事務所のOK事務所に行ってしまっていた。

でもOK事務所の進藤さんは、何かあるたびに社長夫妻に報告をしてくれた。
写真の入った手紙や、動画付きのメールを送ってくれた。

『真紀さんの合宿所の日常生活の写真を送ります。
先輩たちにも可愛がられてます』

『ほんの一場面ですが、真紀さんが舞台を踏むことになりました。
今日は初舞台に向けて猛稽古をしている真紀さんの動画を送ります』
などと。

進藤さんの親切なたよりが来るたびに、社長夫妻は喜んだ。

姉が急にいなくなってしまったことを怒ったり悲しんでいた妹マミも喜んだ。

「わあ、お姉ちゃん、頑張っているなあ。
なんかかっこいいなあって思えて来たよ。
お父さんに頼らないで一人で頑張っててさ。
前にお母さんが言ってた意味がわかってきたよ。
お母さんにはわかってたんだね?
お姉ちゃんは、私とは違って本気の人だって」

*********

(再び北西部の研究所)

システム女子は、謎の男の腕を掴み、研究所そばのいつもの居酒屋の個室に引っ張っていった。
「ちょっとそこの居酒屋まで一緒に来て!
言うこときかないとストーカーされているって警察にうったえるわよ!」

男は、おとなしくついてきた。

居酒屋の個室の席に着くと、システム女子は男に向かって切り出した。
「いつか私に電話して来たのもあなた?
一体、何のために私をつけてるのよ?」

システム系女子は、イライラ、クサクサしていたもので、もしなんならこの人を締め上げて憂さ晴らしをしようと思っていた。
また、ちょっと興味も湧いてきたし。
この男、もしかしたら、オズボーンが漫画に描けるような、何か面白いネタを提供してくれるかもしれないし。
ま、どっちにしてもこの男の話をきいてみたかった。


膝立中腰


男は名刺を出して来た。
きいたこともない無名の出版社の名刺だった。

男は言った。
「私はこの出版社で記者をしております。
何度もあなたの行動を監視するようなとをして申し訳ありませんでした。
そのことは謝罪します。
しかし、さきほどのお話ですが、私は以前にあなた様に電話したことはありません。
電話番号など存じません。
またあなたに電話した人は、弊社の人間でもないと思われます。
私の会社であなたに接触しようとしていたのは私だけですので」

男が紳士的だったので、システム系女子は少し安心したのと同時に、少し怖くもなった。
(え?
この男は私に電話をかけていないって?
じゃあ、この人以外のどっかの誰か、まだ何か探っている人がいるの?)

そのとき、店の人がオーダーを取りに来た。
システム女子は、自分に勢いをつけるために、大ジョッキのビールを二つ頼んだ。
そして店員さんが去ったあと、男にたずねた。

「私に電話をかけたのはあなたじゃないのね?
それはいいわ。
でもあなたは、私を何回も尾行していたことは認めるのね?
じゃあ、あなたが私をつけ回す理由を教えて」

男は口を割った。

「山村さんのことなんですけど」

システム系女子の頭は、『???』となった。

「誰?山村さんって?」

システム系女子には、その苗字に心当たりはなかった。

システム女子は頭をひねったあと、ハッとしてこう言った。
「あ、思い出した!
もしかして、昔、本社で3か月だけ一緒になった派遣社員の人かな?
ん?
あ!
ごめん。違ったわ!
あの人は、村山さんだったわ」

女子は、少し考えてからまた言った。
「研究所に出入りしている物流担当の人の旧姓って、山村さんだったかしら?
いや!ちがうわ。
山中さんだわ」

そのとき店員さんがビールを運んできた。

システム女子は、ビールを一口飲んでから、腕を組んで、居酒屋の天井を見上げながらグルグル考え続けた。
「えーっとお?山村さんね?
山村さん、山村さん?」

その姿を見て、男は、自分の鞄に手をかけた。

男は鞄から出したノートを開くと、中に挟まっていた写真をシステム系女子につきつけた。

「ん?」

その写真は、システム系女子が見たこともない男とメガネをした女性が腕を組んで歩いている姿だった。

「んん?何これ?」
システム系女子は、ますますワケがわからなかった。

男は痺れを切らしたように言った。

「単刀直入におうかがいします。
あなた、アナコンダズの山村投手とお付き合いされてますよね?」

「アナコン?
アナコンダ?
????
それって何?」
と、女子は男にたずねた。


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結論。
何ということだ。

謎の出版社のこの男がシステム女子を追っていた理由は、システム女子がちょっと期待していた、自分の会社の不正問題には関係ないことだった。
男はゴシップ記事専門だった。
アナコンダズの山村が、システム系女子とルックスが似ている女性とつきあっていただけだった。

自分の故郷の北西部のこの街に帰るたびに山村は、このメガネをした女性との逢瀬を繰り返していようだった。
この記者は勘違いして容姿の似ていたシステム系女子を尾行していたようだ。

システム女子は、テーブルの上の生ビールを飲みほした。
そして叫んだ。

「またしても、こんなチンケなしょーもないネタか~いいっ!!」

システム女子はブチ切れた。
「なんなのよ!それっ?
オズボーンが社会派漫画家としてブレイクできるような、もっとデカいネタもってこいや〜ッ!!」

出版社の男は、女子が山村には何も関係ないことを理解した。

「すいません。すいません。
私の勘違いでした。
申し訳ございません」
と、男はペコペコ頭を下げた。

「そしてもうひとつ、大変、申し訳ありません。
実は一度だけ、私は記事に書いてしまいました。
『山村投手のご当地妻は、北西部の●●企業の研究所に勤めるOLか?』と」

女子はもう酔っていた。
「そんなくだらない問題、どーでもえーわ!!」

無名出版社の男は、システム女子に何度も何度も謝りながら、逃げるように居酒屋を出て行った。

居酒屋の個室に残ったシス女は、一人でグビグビと二杯目のビールを飲んだ。
「どいつもこいつも〜、つまらんことで、余計な時間取らせやがって~」


お尻を向ける


しかし、確かに、システム女子にとっては、”アナなんとかズの山村がどんな女とつきあおうが、自分が山村の女に疑われようが実にどーでもいい、つまらんこと”だったが、山村たち当時者たちは大変だった。

SNSで山村との過去の情事を暴露している女に対して、タケシ君は頭に来ていたけど、ビビちゃんは実はそっちの女性のことはあまり気にしていなかった。
SNSの彼女は、下品だがあっけらかんとした面白い感じだったし、情事があったのは随分前のことだったようだし。

ビビちゃんは実は、無名雑誌の取り上げた『山村の地元の彼女』のことの方が気になっていた。

その記事が出たころは、ビビはもう山村と付き合っていた時期だった。

そして、今回タケシ君がぶち上げてくれた『山村の本命の彼女はビビ』という記事を見て、さらに複雑な気持ちになった。

ネタを週刊誌に流した”知人男性”というのはタケシ君に違いないとすぐにわかった。
タケシ君の気持ちはありがたかったし、タケシ君のその行動に思わず笑ってしまったが、ビビちゃんは困った。

山村がどう思っているのか?

山村はそんな記事が出てしまって困っていないのか?
もしも、山村がビビちゃんに縛られたくないと思っていたとしたら、どうしよう。
また故郷の北西部にいる彼女はどう思っているのか?
ビビちゃんはそんなことを考えていた。

タケシ君の流した記事が出て以後、山村は二回ビビちゃんのマンションに来たが、タケシ君の記事についての話はできなかった。
山村も、なぜかそのことについてふれてこなかった。
二人は少しだけ、よそよそしかった。

そんな頃、タケシ君のお父さんは、「俺も久しぶりに野球を見に行くかな?」と言った。

お父さんは、
「ビビさんも誘ってみな」
とタケシ君に言った。

この前、野球観戦を二回断ったが、今回はビビちゃんは球場に来た。


お父さんはビビとの再会を喜んだ。
「どーもお!!どーもう!
ビビさんお久しぶり!
いつもタケシがお世話になってすいません」

ビビちゃんはニッコリ笑った。
「私こそ」

そしてタケシ君の顔を見て言った。
「私こそタケシ君には、ものすごくお世話になってるんですよ。
ねっ!タケシ君」

その雰囲気が少し微妙だったので、タケシ君はドキッとした。
(もしかしてビビさん怒ってる?
喜んでくれてないの?
もしかして僕がやったことは余計なことなの?)


kihuytsio.jpg



(場面変わって、またシステム女子)

システム女子は酔っぱらって家に帰った。

テレビをつけると、ニュースでは火山噴火ガスのことをやっていた。

「まだ、調査中ではありますが、こんなことがわかってきました」
キャスターがそう言うと、画面が切り替わって、学者のような人が出て来た。

「火山ガスと人工物のまじわった結果発生したガスですが、うんぬんかんぬん・・・」

何か難しいことを言っていたが、酔っているシステム女子にはよく理解できなかった。

その人が画面から消えてから、キャスターがわかりやすくまとめてくれた。

「先生のおっしゃったことを簡単に言うと、強い肉体を持っている人たちは、毒ガスから自分の身体を守ろうとする強い強い力があるがゆえに、逆にそれで自分の身体を痛めつけてしまったということのようですね。
ですので多くのスポーツマンたちが亡くなってしまったようです」

キャスターの隣に座っているコメンテーターも言った。
「先ほどの先生の話によると、美形の人も美声の人も、生物として肉体が優れているということなんですね?」

「そうなんですね。
実は、我々が、人を見て美人と感じるのは、顔が左右対称な人なんですね」
キャスターは続けた。

「左右対称の人というのは、生物として優れているといえるということです。
私たち人間は生まれてから、実は日々、栄養不良だったり、ウィルスに犯されたりして、知らず知らずに何万回も怪我や病気と闘っている。
そんな中で、なかなか左右対称のままでいられる人は少ない。
普通の人は、知らず知らずに身体の右側か左側がアンバランスに損傷を受けてしまう。
ですので、顔が左右対称のままでいられた人は、肉体が優れているという証でもあるんですね。
だから生物として、我々はそういう人を求める。
そういう人のことを『美しい』と思ってしまうというわけですね」

「しかし、今回の火山から出た大自然のガスと人間の作った人工的な物とが交わったことにより、生物として優れている人を殺してしまうという恐ろしい毒ガスを生み出してしまったのですね。
恐ろしいことですね」

「なお美声の人についても今、研究が進んでいるようです」

そこまでテレビを見たときだった。
母親がシステム女子の部屋に呼びに来た。
「あなたに電話よ」

家電をかけてきた主は、なんと、以前も電話をかけてきたフリーライターを名乗る男だった。

「以前、電話をした者です。
お気持ちは変わったでしょうか?
あなたの会社のことについておうかがいしたいことがあるので、どうぞ会っていただけませんでしょうか?
ぜひ、ご協力いただけませんでしょうか?」

以前は、逆・セクハラのことを追及されるのかと思ったのですぐに電話を切ったシステム女子だったが、今回は明確にこう答えた。

「はい。わかりました。ぜひ」




次回に続く
生き残った三軍選手たち⑮                  







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2Comments

ダンディー?  

No title

目まぐるしく展開が進んでいくね!

今回はエロい場面は無かったが、1番始めに出た画像⁉フーゲツさんの美しいショットに見とれました👍

2021/04/24 (Sat) 08:08 | EDIT | REPLY |   
huugetu

huugetu  

Re: No title

どうもありがとう。

話を追っかけていると、ついエロシーン書くこと忘れちゃうんだよ

2021/04/24 (Sat) 08:30 | EDIT | REPLY |   

コメント