生き残った三軍選手たち⑤
火山毒ガスに研究所は関わっているのか?

前回までの話➡生き残った三軍選手たち① ② ③ ④
国の北西部の山、南東部の山、南部の山が噴火し、人工物と混じわった。
その結果、有毒ガスが生成されて、一部の国民に被害を与えた。
このガスにより、国民の中の①トップレベルのスポーツマン、②トップレベルの美人、③トップレベルの美声の持ち主たちが亡くなってしまった。
北西部の火山のそばにある研究所で警備のバイトをしている三流漫画家のオズボーンは、ナンパした女性社員から意味不明のことで責められていた。
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「あんた、どこの記者よ!白状しなさいよ!
週刊ブンブン?週刊ちょうちょう?
それとも週刊イレブン?
警備員になってまで、潜入してきて!!
うちの会社を陥れようとして!!
しつこいのよ!!あんたたち!」
システム系女子は、怖い顔で三流漫画家オズボーンに迫ってくる。
何かを勘違いしているようだった。
オズボーンはどうしようかと思った。
「あ、そうだ!」
オズボーンはスマホを出して、自分の漫画が掲載されたマンガ雑誌のホームページを探した。
そこにはオズボーンの顔写真と漫画の表紙の画像が掲っていたのだ。
「ほら!これ見て。
僕は警備員のバイトしてるけど、本業は漫画家なんだよ。
漫画で研究所の絵が描きたいから、建物の中を見せてほしいって言ったんだよ」
システム女子は眉をひそめた。
「●●社の『コミックアラスカ』ですって?」
次にオズボーンは電子書籍になっている自分の漫画を開いて見せた。
しかしシステム女子は言った。
「●●社って言ったら、スクープを暴くことにしつこいことで有名な”週刊ブンブン”も出版してる会社じゃないのよ!」
システム女子はオズボーンの電子書籍漫画をパラパラ見ながら、
「あんた、週刊ブンブンの手先ね」
と言った。
「ちがーうう!!」
オズボーンは困った。
何のことだ?何を勘違いされてんだ?と思った。
「ん?」
と言って、そのとき、オズボーンの電子書籍の漫画を見ていた女子の動きが突然に止まった。
そして女子は呆れたように言った。
「なんつうくっだらない漫画?」
「なにっ?!」
システム女子は、フーッと溜息をつくと、スマホをオズボーンに返してきた。
彼女は落ち着いた表情になっていた。
「ごめんなさい。
私の勘違いだったわ。
こんなくだらない漫画を描く人が、潜入記者のわけないわ。
あ!
いえ・・・その・・・あの、ご、ごめんなさい」

システム女子はオズボーンに謝罪した。
女子は、オズボーンのことをこの会社の悪事をスクープしようとしている記者だと疑っていたそうだ。
そしてその理由も話してくれた。
彼女は最近、街中で謎の男につけ回されたり、フリーライターと名乗る人物から何度も電話取材を申し込まれていた。
その人物は、この会社の社内情報を聞きだそうとしてきたんだそうだ。
「私だけじゃないの。
他の人も、何人かそんな目にあったってきいたわ
何者かたちが、うちの会社を嗅ぎまわっているの。
うちの会社の汚点を暴こうと。
だから、私に突然近づいてきて、研究室が見たいというあなたもそいつらの手先なのかと思ったの」
システム女子は続けた。
「あなたは、私に、『とてもおキレイですね』なんて言って近づいて来た。
一瞬、嬉しかったけど、よく考えたら、ものすごく腹が立ったわ。
組織は、正攻法では無理なので、別の方法で私を陥れようとしているんだと思ったわ。
手を変えて、イケメンの刺客を送ってきて、ハニートラップで私をひっかけようとしているのかと?
バカにすんじゃないわよ!って思ったのよ。
だから私はわざと親しくなったフリをしてから、あなたをつるし上げてやろうと思ったの」
「そ、そーなんだ?
ぼ、僕はホントに君が可愛かったからと、研究所の絵が描きたかったからナンパしただけなんですけど」
と、オズボーンはとまどいながら言った。
しかし、その週刊誌だか、フリーライターだか何者かは、この企業の一体、何の情報を調べようとしているんだ?
オズボーンはその疑問を口にした。
「その記者たちは、この会社のナニを探っているの?」
「そ、それは・・・言えない」
と女子は言った。
(言えない?
”わからない”ではなく、”言えない”?)
ここでオズボーンは思った。
(え?ウソでしょ?
まさか、マジでこの企業の研究所と火山噴火がなんか関係あるの?)
オズボーンはコンピューターのたくさん並んだオフィスを見回した。
オズボーンはシステム女子にたずねた。
「君はちなみに、何のシステムを担当しているの?」
「え?」
「例えば、素人の僕はよくわからないんだけど、研究所で使っている機器をコントロールするとかそういうシステム?」
オズボーンは、踏み込んでみた。
もしかしたら、この研究所は本当に何か火山爆発にまつわる怪しいことをしているのかもしれない。
そしてこのシステム女子が関わっているのかもしれない。
彼女はどんな表情をするか?
しかし、システム女子はあっけなくスラスラと答えた。
「違うわ。私は研究にはいっさい関わっていません。
私のこの部署は研究のことには全く素人なんです。
私の部署は、ただ、一般の社員の使うメールやネットのシステムの構築やメンテをしているだけ。
全国の社員のね。
ここの研究所の土地が余っていたので、うちの部署が間借りというか、同居しているだけなの」
「君は研究部門には関わっていない?」
「ええ。
私は社員たちの使うシステムをいじっているだけ」
オズボーンは、
「そっか。
君は研究には関係ないのか。
じゃあなんで、君は謎のライターにつけ狙われるんだろう?
どうして?
心当たりはあるんでしょ?
僕には教えてくれないだろうけど」
と言った。
迷いながらもシステム女子は、話してくれた。
「研究とかシステムとかそういうことには関係ないわ。
記者が嗅ぎまわっているのは、多分、もっと人間的なこと」
「人間的なこと?」
とオズボーンがたずねると、数十秒、システム女子は無言になった。
オズボーンに話すかどうかを迷っているようだった。

今回の火山噴火によりプロ野球アナコンダズの一軍、二軍の優秀な投手がたくさん亡くなった。
アナコンダズの三軍の投手だった山村は、急きょ一軍に昇格した。
山村の彼女のビビは、球場で知り合ったアナコンダズファンのタケシ君と、彼のお母さんと一緒に試合を見に行った。
三人は飲み物とアメリカンドッグや焼きそばを買ってから、応援席についた。
タケシ君は鞄から、お父さんに借りてきた二軍から昇格したバッターのレプリカユニフォームを出して着た。
次にタケシ君は、山村の応援タオルを出して来て、自分の首にかけた。
それを見て、タケシ君の隣に座っていたビビは一瞬、身体を大きくビクッと震わせた。
タケシ君のお母さんはビビにたずねた。
「ビビさん、今日朝、急に誘っちゃってすいません。
何かご用事があるのに無理につきあってもらっていただいたんじゃないかと思って。
申し訳ありません」
「いいえ、用事なんてありません。
誘ってくださって嬉しかったです」
とビビは答えた。
タケシ君は言った。
「でもビビさん、この前と違って、今日、なんか怖い顔してる」
タケシ君にそう言われてビビはハッとした。
ビビは自分の頬をぴしゃりと叩いた。
今日、山村が登板するかもしれない。
ビビは、その緊張で顔も体中も硬直していた。
ビビは大きく左右に頭をふった後、タケシ君に向かってニッコリ笑った。
「ごめんね。
なんでもない。
今日は元気にアナコンダズを応援しようね」
ビビはその後は、一生懸命大声を出してアナコンダズを応援した。
アナコンダズは3点先制した。
タケシ君が着ているレプリカユニフォームの選手も打った。
タケシ君は嬉しそうに叫んだ。
「わあい!お父さんのいちオシの選手が打った!」
ビビも大喜びで手を叩いた。
お母さんは、
「お父さん見られなくって、今頃悔しがってるかな?」
と言った。
しかしその後、アナコンダズのピッチャーが少し打たれて、コントロールもおかしくなってきた。
相手チームに一点入れられてしまった。
マウンドにアナコンダズのピッチングコーチが向かった。
それまで、努めて元気だったビビは、
「や・め・て」
と震える小さな声でつぶやいた。
タケシ君とお母さんは、『?』という顔をしてビビを見た。
そして、次の回にアナコンダズは二点目も取られれしまった。
アナコンダズの監督がグランドに出て来た。
「や・め・て」
ビビは、目をつぶってそう言った。
タケシ君は、不思議そうにビビの顔を見た。
お母さんは言った。
「ビビさん。
そんなに悲観的にならないでも大丈夫ですよ。
まだ勝ってますよ」
アナコンダズの投手の交代が告げられた。
「アナコンダズの選手の交代をお知らせします。
ピッチャー山田に代わりまして、
や・ま・む・ら~」
「きゃああ!やめてえええ!」
ビビはそう叫ぶとタケシ君の腕に両手でしがみついた。
タケシ君は驚いた。
お母さんも驚いてビビを見つめた。
登場曲が流れる中、山村はリリーフカーに乗ってマウンドに向かっていた。

(再び、研究所の場面)
迷いながらも、システム女子はオズボーンに会社の秘密を打ち明けた。
口を開いてくれた。
「うちの会社、実はセクハラが横行していたんです」
「はあ~?」
オズボーンは思いがけないその答えに、そんな声を出してしまってた。
システム女子は言った。
「この会社にセクハラが横行していることを多分週刊誌がすっぱ抜こうとうしているのよ。
でも、これ以上は詳しく言えないわ。
あなたに漫画家のネタにされても困るし」
そうだった。
システム女子は、オズボーンには詳しいことは話してくれなかったが、この会社ではセクハラが盛んだった。
特に女性社員から男性社員へのセクハラが!!
オズボーンと研究所長室の大きなソファでセックスをした所長秘書などがその筆頭だった。
秘書は、この国の南東部にある本社に勤めていたときからちょいちょい、年下の男性社員にセクハラをしていた。
他のお姉さん社員たちと一緒に、若い男性社員にエッチなことをしていた。
パソコンのマウスを持つ男性社員の手の上に自分の手を重ねたり、オフィスですれ違いざまに股間を触るのは日常茶飯事。
一度、ある男性社員を酔わせて三人がかりで襲ったことがあるという噂もあった。
お姉さん社員たち三人は、男性社員をホテルに連れ込んで裸にしてロープで縛ったという。
一人が男性社員のイチモツを咥えこみ、もう一人がキス攻めにし、もう一人が乳首を吸った。
このときは、問題になりそうになったのだが、男側に同意があったのかなかったのかが不明でウヤムヤになったらしい。
しかしその噂は、社員たちの間で密かに伝えられていた。
そして、最近、ここの研究所で秘書は、所長秘書の立場を笠に着て、新入社員の男の子に何かをしたようだった。
突然、辞めてしまった新入社員だった。
真偽のほどはわからないけど、秘書のせいではないかという噂がたった。
システム系女子は、実は自分も一回、その男の子にセクハラまがいのことをしてしまったことがあったので怯えていた。
システム女子はセクハラをするつもりではなく、正式につき合いたかったので言い寄ったのだが、それも彼にとってはどうだったのだろうか?他人が見たらどうなんだろうか?と悩んでいた。

(場面代わって、再び、アナコンダズの球場)
ピッチャーマウンドでは、山村が準備投球をしていた。
自分の腕にしがみついて、下を向いてガタガタ震えるビビに、タケシ君は困惑していた。
お母さんは言った。
「どうしたの?
ビビさん、どうしたの?」
ビビはタケシ君の腕を離すと、お母さんとタケシ君に向かって泣きそうな顔でうったえた。
「出さないでほしいです。
怖いです。
打たれちゃうよう。
暴投しちゃうよう。
そしてまた三軍に戻っちゃうよう」
「山村のこと?」
とタケシ君は言った。
タケシ君は、自分の首から山村の応援タオルを外すと、ビビの首にかけた。
そして、タケシ君は足元に置いていた自分の鞄を膝の上に上げた。
タケシ君は鞄の中から、故・犬田投手の分厚い写真集を出して来た。
お母さんは言った。
「タケシ、そんなもんまで持って来たの?」
犬田投手は今回の火山噴火で亡くなってしまったが、生前はアナコンダズのエースだった。
タケシ君は、ビビに向かって写真集を掲げながら言った。
「ビビさん、大丈夫。
今日は犬田がついてるから」
ビビは大きく目を見開いてタケシ君を見つめた。
タケシ君は力強く言った。
「犬田は高校時代の山村の先輩なんだよ。
だから大丈夫。
きっと犬田が天国から応援してくれるから!!」
次回に続く
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