エロ不良社員・殺人事件⑥

熊井太郎は被害者なのか加害者なのか?


黒いタンクトップを胸の上までまくりあげて下はノーパンで寝転がっている
★これまでの話➡エロ不良社員・殺人事件①  エロ不良社員・殺人事件②  エロ不良社員・殺人事件③  エロ不良社員・殺人事件④  エロ不良社員・殺人事件⑤


俺は、自分の若い恋人(不倫な)をセクハラ委員会に送りこむことに成功した。

セクハラ委員会とは、会社の経営からは独立した組織だった。
上司からのセクハラ、パワハラに悩む社員たちが駆け込むところだった。

俺たち人事部員でさえも、関与することを許されていなかった。
なので、俺は、若いヒラ社員であるところの自分の彼女をセクハラ委員会に送り込んだのだ。

彼女がセクハラ委員会の活動に参加したいという意志を表明したら、すぐに受け入れられたそうだ。

彼女からの報告をきくために、会社帰りに俺たちは、また会った。

今度は、彼女の職場から一番近い繁華街の、個室のある居酒屋で会った。
今日は生理中なのでエッチが出来ないと彼女が言うので、ホテルでは会わなかった。
また、彼女は生理痛がひどいので、申し訳ないので彼女の職場のそばまで俺が足を運ぶことにしたのだ。

彼女からのメールでは、軽くきいていた。
「セクハラ委員会の資料にも熊井太郎さんの資料があったわ。
説明がややこしいので、詳しくは会ってから話すわ」

居酒屋の個室に入ると、まず俺は彼女を抱きしめた。

「会いたかった」
「うふふ」

俺は彼女にキスをした。
彼女は細い腰をくねらせた。

そこで、店員さんが来てしまったので、俺たちは体を離した。

肉じゃがと、焼き鳥と、お刺身と、シーザーサラダと、ウーロン茶を前にして、俺は彼女の報告をきいた。

「10年前よ。
セクハラ委員会が設立された頃よ」

「10年前?
熊井太郎氏は、誰にどんなセクハラをしたんだい?」

彼女は驚くことを言った。

「違うのよ。
10年前に、熊井太郎氏がやられたのよ!
「え?どーいうこと?」

「熊井太郎氏が、セクハラの被害者だったのよ!」
「えええええ!!」

10年前のその頃、世間でも、俺たちの会社内でもセクハラは問題化してた。

会社内でセクハラ委員会が立ち上げられた。

しかし、その頃問題になったセクハラというのは、男性上司や、あるいは同僚男性による、女性に対してのセクハラばかりだった。

世間も、会社も委員会も、積極的にみんな女性たちのセクハラ被害の訴えは、取り上げていた。
そして対処していたそうだ。
我が人事部も、セクハラ委員会からの報告を受けて、セクハラをしていた上司の男に減給という処分をくだしたこともあったそうだ。

俺の彼女は言った。
「でもね、でもね。
その頃、男性の被害者側からの訴えは、ちゃんと取り扱ってもらえなかったみたいなの!」

「熊井太郎氏が、セクハラの被害者だった?
でも当時はその訴えはきいてもらえなかった?」

彼女は頷いた。
「最近は、女性管理職も増え、女性から男性へのセクハラ、パワフラも増え、相談に乗っているけど。
でもね。10年前は、揉み消されたのよ。
『男のくせに何めめしいこと言ってんだよ!』
みたいな感じで」

頭が混乱して、俺はどこからきいていいかわからなかった。
「具体的に熊井太郎氏は、誰にどんなセクハラをされたんだよ?」

わかった!!やっぱり社長か??
熊井さんは女社長にセクハラされたのか?

彼女は言った。
「恵美子さんによ」


全裸に黒いタンクトップだけで寝転んでいる


は?

「恵美子さんって熊井太郎さんより10個ほど年下だろ?」

「そうよ。
だから余計に熊井太郎氏の訴えは、セクハラ委員会にさえちゃんと取り扱ったもらえなかったのよ。
資料としては残したんだけど」

「恵美子さんは一体何したの?」

「10年前、関連会社に出向していた熊井太郎さんは、そのころ東京支社の恵美子さんとは、仕事でよく関わっていたそうなの。
立場としては、東京支社が仕事を発注して、関連会社が請け負う形ね。
つまり恵美子さんの方が仕事の立場的には上だった。
で、恵美子さんは何やかんやと熊井さんをかまって、社内でもベタベタ触ってきたり、仕事で車に乗った時に、自分のスカートをまくって下着姿を見せて来たり、夜は無理やり飲みに誘ってホテルに連れ込もうとしたり、みんなの前で恋人気取りの態度を取ったりしたそうよ」

俺は、彼女の話を遮った。
「ちょ、待って!
待って!
頭がついていかない。
信じられないんですけど!」

そこで彼女は、インターバルをとるかのようにサラダを一口、口にした。

俺が考え込んでいると、彼女はまた、口を開いた。
「あ、そーそー。
社長は結局、セクハラ委員会の資料をあんまり見なかったらしいわよ。
看護師さんが見せられる資料だけを用意して待っていたんだけど、1枚だけ見たら社長は『あんまりおもしろくないからもういいわ』って言って帰って行ったんですって」

あーそー。
うん。
なんか、俺、最近、社長のキャラが段々わかって来た。
そうかもね~。

俺はウーロン茶を飲んだ。

少しの間、俺がウーロン茶を飲むのを待った後、彼女は遠慮がちに言った。
「恵美子さんの話の続きしてもいい?」

俺は頷いた。
まだ頭は混乱していたが。

恵美子さんの資料はセクハラ委員会に、まだまだ、もっとあったそうだ。

「恵美子さんは、最近、若手女性社員にもパワハラ、そして若手男性社員にもセクハラをしてるそうよ。
それはまだ調査中で、詳しくは私もきけなかったんだけど、誰か若手社員から訴えがあったのは確か」

えええ???
やめてくれ、これ以上、混乱させないでくれよ。
俺はそう思ったのだが、俺の恋人は続けた。

「恵美子さんが、最近、若い人にまでハラスメントを行っていたので、セクハラ委員会は、過去の恵美子さんのセクハラまでさかのぼって調べることにしたのよ。
そこで、今まではほとんど対応もされていなかった10年前の熊井太郎氏が受けたセクハラがクローズアップされたのよ」

俺は、唖然としながら彼女の話をきき続けた。

「過去の彼女の悪行までも、再調査の対象にされたの。
セクハラ委員会は、少し前から熊井太郎氏のいる愛知に行ってご本人からお話をきこうとしていたそうなのよ」

わかったよ。
セクハラ委員会が、この前、人事部にセクハラの資料を持って来てくれなかった理由。
そちらには持って行けないので、御足労だが社長に来てくれと言った理由。
恵美子さんは、セクハラパワハラ委員会にとっては、危険人物だったのか。

そこで俺は、忘れていたことを思いついた。
「ちょっと待って!」
と、彼女に言うと、俺はその場で、若川君の携帯に電話した。

若川は、まだ会社にいた。

「若川!ききたいことがある」

若川はとぼけた声で言った。
「なんですかあ?
犬田さん今どこにいるんですかあ?」

「神奈川だよ。
いや、そんなことはどうでもいい。
君、二カ月くらい前に社長が来たときに、馬田部長を呼びに来ただろう?
あれなんだったんだ?
どうして社長に対応してる馬田部長を連れだしたんだ?
大した用事もないのになぜ?
誰に頼まれたんだ?」

恵美子さんに頼まれたのか?

しかし、若川はとぼけた。
「は?そんなことありましたっけ?」

俺は、電話で若川を厳しく詰問した。
「言え!!言うんだ!
おまえ、とぼけるんじゃないよ!」

俺があまりに激昂していたので、彼女が、俺を止めた。
「ちょ、ちょっとやめてよ。
大声出さないで」

そこで若川が、言った。
「あれれー、犬田さん、女性と一緒なんですか?」

「そんなことはどーでもいいんだよ!
答えろ!若川!!
大事な話なんだよ!」


寝転んで全裸


若川は、あきらめたかのように、突然、神妙な声になった。

「実は。
ごめんなさい。
本当にごめんなさい。
僕、社長の顔が見たかっただけなんですう。
だから会議室に行ったんです。
社長と同じ大学出身の僕も、ちゃんと仕事してますよ!ってところを社長に見せたかっただけなんですう」

「はああっ?!」

「だって、だって、犬田さんや馬田部長の有名大学と違って、僕のCランクの大学の出身者なんてうちの会社にほんの少ししかいないんですよ。
で、今回、その我が大学出身の人が社長になった!
僕は、嬉しかったんです」

若川の言うことは、どうも本当のようだった。

なぜなら、こいつ、次にとんでもないことを言ったからだ。

「ごめんなさい。
この前の北海道の不倫ネタも僕が社長に流しました。
社長が、『そういう話があったら私にすぐに教えてね』って、じきじきに僕に電話くれていたんで。
嬉しくって。
僕、社長の力になりたくって。
許してください。
もうしません」
と、若川は申し訳なさそうに言った。

俺は、脱力しながら若川に言った。

「ああ。
俺こそ悪かったな。
ごめんな。
キツイこと言って
すまん」

俺が謝ると、若川は、急に元気になりやがった。
「ねーねー犬田さん、今、誰といるんですかあ?
どこにいるんですかあ?」

「それはどーでもいい!!」

俺は、若川の電話を切った。

彼女は、自分の得た情報の話を続けた。

「セクハラ委員会は、熊井太郎氏に会おうと何回も連絡を取ってたんだけど、いろいろ両者のスケジュールが合わなくって。
一度、熊井さんが出張で本社に来たときも、忙しくてほんの5分しか話ができなかったみたいで。
そんなことをしているうちに、セクハラ委員会が熊井太郎氏に接触しようとしていることが、世間(会社内)に少しずつ漏れて来たみたいで。
もしかしたら恵美子さんも気づいていたかもしれない」

それで、恵美子さんが、まさか口封じに熊井太郎を?

俺は少し冷静になってきた。
俺は今度は馬田部長の携帯に電話をかけた。

彼女は俺の目の前で心配そうに俺を見ていた。

馬田部長もまだ会社にいた。
俺は部長に言った。
「部長、すぐに調べてください!
20年前、熊井太郎氏が兵庫支社にいたとき、近隣の支社に恵美子さんがいなかったかどうかを」

部長は、
「え?は?おまえ、今どこにいるんだ?
セクハラ委員会のことはどうなったんだ?」

「それはあとで報告します。
あと、そうだ。
鹿児島支社のA子さんの電話番号も調べて教えてください。
俺、すぐにA子さんと連絡を取りたいんです」

そのとき、俺の彼女がテーブルの上のウーロン茶を持つ手を滑らせた。
「キャッ!」
と彼女は、小さな可愛らしい声を上げた。

部長は言った。
「おまえ、女性と一緒なのか?
今どこにいる?」

「だからあ!それはどうでもいい!
あとで報告します!
部長は、俺が今言ったこと調べて、すぐ電話くださいね!」
そう言って、俺は電話を切った。

部長はすぐに調べてくれた。

二つのことを教えてくれた。
①鹿児島支社にいるA子さんの携帯の電話番号
②恵美子さんが20年前、新入社員のとき、ほんの数カ月だけ、京都支社で新人研修を受けていたこと。

「馬田部長、俺は明日、鹿児島に飛びます。
明日は会社に出社ぜず、直で鹿児島に行きます。
セクハラ委員会のことは明日、鹿児島から帰る道中でメールで報告します」


背中向け寝る


すぐに馬田部長に恵美子さんのことを教えるのはやめた。
まだ部長のそばに恵美子さんがいるかもしれないからだ。
俺がいないところでの部長の恵美子さんへの早まったアプローチは止めたかった。

明日、ちゃんとA子さんに、20年前に熊井太郎氏を巡って兵庫周辺の女たちの間で何があったのかを確認してから、自分の口で恵美子さんに問いただしたい。


俺は鹿児島支社のA子さんにアポイントメントをとり、次の日は、朝から羽田空港に行き、鹿児島空港に飛んだ。

昼には、A子さんに会うことができた。
鹿児島支社のA子さんは、お昼休みをあけて、俺に会ってくれた。

俺より少しだけ年上のA子さんは、年相応には老けてはいたが、美人だった。
「わざわざ東京からご苦労様です」

俺たちは、鹿児島支社の一階フロアにある大きな椅子に座った。

A子さんは言った。
「犬田さん?
熊井太郎さんの話がききたいって?
この前、そちらの部長さんに『熊井さんの生前の心温まるエピソードが欲しい』ってお電話いただいたときは、私、亡くなった人に対して、ものすごく失礼なことを言って、ご協力しませんでした。
でも、わざわざ鹿児島まで来て私なんかにまで会って、彼のお話をききたかったんですね?
あは。
もしかして、彼にまつわるいいお話が全然、集まらなかったんですか?」


俺は、正直に思い切って、言った。
「え、と。
実は。
あの。
私は、熊井太郎さんというよりも、彼が兵庫支社にいたときの周辺の女性達の話をおうかがいしたくて、まいりました」

A子さんは、俺の目をじっと見た。

辺りは人通りが多く、ざわついていた。
A子さんは、俺の目から目を離すと、ゆっくり周りを見回してから、再び俺の方を向いて言った。

「犬田さん。
その話は、夕方にしましょうか。
私、今日は仕事、5時半には上がれます」

*****

俺は、A子さんと別れた。
再び、アフターファイブに会うことを約束して。

俺は馬田部長に電話した。

「部長、今日中に東京に帰るつもりだったのですが、恐らく帰れません。
A子さんには今お会いしたのですが、夕方から更に詳しくお話をきくことになりました。
話が終わる頃はもう東京に帰る便がないと思われます。
今日の俺、宿泊出張扱いにしてもらえますか?」

「ああいいぞ。
宿泊代は出してやる。
しっかりきいてこいよ」
と馬田部長は言った。

電話を切ったあと時計を見ると、PM13時半だった。
A子さんに会うまでに時間があるな。

「桜島とか見たい!」
と俺は思った。

しかし、ネットで調べると、観光するようなそういうところまで行って帰ってくるまでの時間はなかった。

しょうがないので、そこらへんにあったファミレス(九州発祥のファミレス・ジョイフル)に入り、俺は持って来たパソコンを広げ、持って来ていた通常の仕事の処理をして、時間を潰した。


四つん這い


PM6時にA子さんがジョイフルにやって来た。
「お待たせしました」
「ああ、どうもすみません」

でもA子さんは席に座らなかった。

俺が不思議に思っていたら、A子さんは言った。
「ここじゃなくって、美味しい鹿児島名物のあるお店に行きませんか?」


豚肉を色んな味付けにした美味しそうな料理や、鶏の刺身や、さつま揚げや、焼酎の置いてあるお店にA子さんに連れて行かれた。


「まずは、かんぱーい!」
A子さんは、焼酎の入ったなんていうのアレ、おちょこ?ぐい吞み?それを上に掲げた。

そのノリに俺はとまどったが、A子さんはひと口焼酎をグイッと飲んだ後、言った。

「あのね。酔わないと話せないから」
「は、はい」


A子さんの話はこうだった。

20年前の兵庫支社。
ワンフロア下の部署にいた、2才年上だった熊井太郎さんは、何かにつけてA子さんをやたらと誘って来たそうだ。

今夜ご飯を食べに行こうとか、休日に一緒に映画見に行かないかとか。

でもA子さんには当時つき合っている恋人がいたので、のらりくらりとかわしていたそうだ。

A子さんは、さつま揚げを一口食べたあと、また焼酎を一口飲んで言った。
「彼は私によく言ったわ。
『冷たいなあ。でも、僕は冷たい女性好きだ』
とか、
『僕はあきらめないよ』
とか」

そして、あまりの押しの強さに負けて、A子さんは一度、熊井太郎さんとデートしてしまったそうだ。
デートでの彼は優しく、A子さんはとても楽しかったそうだ。

しかしA子さんが熊井太郎さんに魅かれだした頃、こんな場面を見たという。

熊井太郎氏が、A子さんの部署に仕事の用事で来たときだった。

用事が終わったあと、熊井太郎さんは、去り際にA子さんの同僚の女性社員に、何かメモを渡していた。
ササッとさり気なくだった。
女性の方も、受け取ったメモをさり気なく、ササッとポケットにしまった。

他の人は誰も気づいていなかった。

気になってしまったA子さんはその日、その女性社員が帰るときに尾行した。

女性社員は、会社の最寄り駅に向かわずに、歩いて隣の駅に向かって行ったそうだ。
A子さんがついてゆくと、案の定、隣の駅には熊井太郎氏が待っていたという。

二人は嬉しそうに見つめ合ったあと、駅前のレストランに入って行ったという。

「私、自分でもバカだと思ったんだけど、そのレストランの向かい側のカフェに入って、二人が出てくるのを待ってしまったわ。
一時間後に、二人がレストランから出てきた後に向かったのは、ホテル街だったわ」

ほ、ほう。

そこまで話してから、A子さんは、俺に料理を勧めた。
「犬田さん。
これ美味しいのよ。
ね、召しあがって召しあがって」

そして俺のぐい吞みに焼酎を注ぎながら、A子さんは話を続けた。
「他にもあったのよ」

A子さんは、いつも昼食を一緒に食べていた、隣の部署の仲のいい一つ年下の女性社員から相談を受けたと言う。
『A子さん。誰にも言わないで欲しいんですけど』と、その女子は切り出したという。

後輩女性社員の相談は、熊井太郎氏に交際を申し込まれて困っているということだった。
『社内恋愛って、どうなんだろうかと思ってまして。
私、どうしようかと困ってしまって』

どうしようと言う割りには、そのコの目はもうハート型になっていたという。

「なんだかショックだったわ」
とA子さんは焼酎をグイッとやりながら言った。


ちょっと足をだらしなくして寝転がっている


A子さんは、現実に戻ったように、また俺に言った。
「あ、犬田さん、食べて食べて。
飲んで飲んで。
あ、そうだ。キビナゴも注文しようかな。
美味しいのよ。
ぜひ食べてって」

俺は、お付き合いで焼酎をグイッと一口飲んでからきいた。
「熊井太郎氏は、他にはどんな女性とお付き合いがあったのですか?」

どうやら少し酔って来たらしきA子さんは、何人かの女性の実名を出して話し始めた。
「B美ちゃん。あの子は自分から寄って行って熊井太郎氏を一生懸命誘ってたわね。
あとC菜さん。
あの方は、一度熊井さんとお茶をしただけで、彼にのぼせ上がってたわね。
D江さんも怪しかったわね。
みんな馬鹿なのよ。
熊井太郎に騙されてさ。
私みたいにクールにふるまわないと」

A子さんの話には、恵美子さんの名前は出てこなかった。
当時、兵庫支社のお隣の京都支社に新入社員研修に来ていた恵美子さんのことを聞きたかったが。
でも、名前をこちらから出してよいものか、どうしようか俺は迷った。

もう少し酔わせて、話させるかな。

俺は焼酎の徳利を持つと、A子さんの焼酎グラスに注いだ。
「A子さんは、随分、社内事情にお詳しいんですね。
すごいですねえ。
いや大したもんだ」

しかし、それ以上は、欲しい情報はきけなかった。
恵美子さんの話は出てこなかった。
酔ってきたA子さんは、
「まあ、ルックスもよかったんだけど、あいつ口もうまいのよね~。
あと雰囲気かしら。
私も騙されかけたわ~。
あ、ごめん。
犬田さん、飲んで飲んで。
食べて食べて」
と言ったあと、A子さんは、自分が熊井太郎氏にどんな風に熱心に口説かれたかの話を続けた。

A子さんは思い出に酔いながら、焼酎をグイグイいったし、俺にもどんどん飲ませて来た。

さて、俺はこんな本格的な焼酎をあまり飲んだことない。
焼酎をたまに飲むとしても、薄~く薄~く割ったやつしか飲んだことない。

今日は、東京に帰らなくてもいいということで、油断した部分もあった。
A子さんもベロベロになっていたが、俺も気づいたらベロベロになっていた。


「うち来る?
今日、ちょうど夫がいないのよ~」

A子さんのそんな言葉に乗って、酔った俺はA子さんの家に行ってしまった。

宿はまだとってなかったし、フラフラと俺はA子さんについて行ってしまった。


寝そべっているところを斜めに写した


やべええ!
またエッチしちゃうの俺?
しかも、今度はダブル不倫か?!
俺も、なかなかの、社長の好きなエロゴシップ社員だ!

しかし。

とは、いかなかった。

腰が抜けるくらい酔っていた俺は、A子さんの家では、勃起もしなかった。

というか。

A子さんのおうちに行くと、A子さんがもっとエキサイトしてお喋りを初めてしまったからだった。

A子さんが出してくれた、酔い覚まし?の缶ビールを飲んでいたときだった。

A子さんは突然、本音を語り出した。

「犬田さん?
さっきおっしゃったわよね?
私が社内事情に詳しいって?
それは当たり前よ。
当たり前よおおお!」


A子さんは、言った。
「だって、私ったら、たった一回のデートで体を許してしまったんですもの!
熊井太郎に!
しかもそれが自分の彼氏にばれて!
私は、婚約まで決まっていた自分の彼氏に別れを切り出されたのよ!」


あ、ああそうだったんですか?
さっきは言ってくれなかったけど、実はA子さんも熊井太郎氏と寝てたんですね。


A子さんは続けた。
「私は当時、クールなフリをしつつ、熊井太郎とは遊びよと言いつつも、
実は、熊井の動向をずうっとうかがっていたのよ!
見張っていたのよ!!
クールなふりしつつも本音は、私とフィアンセを別れさせたからには、熊井太郎に責任とって欲しいと思ってた。
私が、熊井のたくさんの女の中の一番じゃないと許せない!
本命は私じゃないと許せない!
そう思ったので、私は、熊井太郎の動向をずうっと見てたのよ。
だから私はあいつの女事情に詳しいのよ!
ずうっと見張っていたんですから!」

A子さんは、興奮しながら憎々し気に語った。

俺は、なんだか申し訳なくなった。
「A子さん。
ごめんなさい。
イヤな過去を思い出させてごめんなさい」


しかし、その直後だった。

やっと聞きたかった話がきけることになった。

A子さんは、フッと溜息をつき、落ち着いた。
「いえいえ。
いいの。
私はまだマシよ。
私は、その頃、充分大人だったし、自己責任ですもの。
私が自分で勝手に熊井にのぼせ上がって、自分が勝手に婚約者を裏切って、婚約者を失っただけですもの。
自分がいけないのよ。

でもでも。
でも。
もっと可哀想な人もいたわ。

お隣の京都支社に新人研修で来てた若いあのコは、熊井に処女をあげた挙句に、妊娠もしたのに、フラれたという噂のあった人。
美江子ちゃんかな?恵美子ちゃんかな?
確か、そんな名前だったかしら?





次回、最終回に続く
エロ不良社員・殺人事件⑦ 


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2Comments

ダンディー?  

No title

だんだん話が見えてきたね👍最終回楽しみ!

2020/12/16 (Wed) 08:25 | EDIT | REPLY |   
huugetu

huugetu  

Re: No title

主人公、この日の夜はベロベロで勃起せずとも

一夜明けたら、A子さんと朝エッチさせたいわああ

2020/12/16 (Wed) 17:56 | EDIT | REPLY |   

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