エロ不良社員・殺人事件②
部長と俺の探偵ごっこ開始!!

★これまでの話➡エロ不良社員・殺人事件①
俺がC金庫の資料を持ってみんなのところに戻ると、馬田部長は部下たちと話していた。
「部長、この亡くなった熊井太郎さんってご存知ですよね」
「ああ同期だよ。
信じられないよ。どうしてこんなことに」
「まだお若いのに、階段も何もない平なところで、頭を強く打って亡くなったってどういうことなんでしょう」
そのとき、部長のデスクに電話がかかって来たのを若子ちゃんが取った。
「馬田部長、総務部長からお電話です」
部長が総務部長の話を聞いているのをみんなが見つめた。
「そうですか。
はい。
そうですか。
え?
はい。
わかりました。
では、こちらからも人を出しましょう」
部長は電話を切ると、俺に向かって言った。
「ちょっと大変なことになっているようだ。
総務部長は、今日、愛知支社に行くそうだ。
誰か一緒に行ってくれないか?
恵美子さんか、君かどちらか」
「恵美子さんは、今休暇中です」
「そうか、じゃあ犬田、おまえに頼んでもいいか」
「え、ええ。
でもその前に・・・・・・」
俺は、腕を引っ張るようにして馬田部長を会議室に連れて行った。
みんなは不思議そうな顔で俺たちを見ていた。
会議室で、馬田部長にC金庫の資料を見せた。
「このリストに名前があるのに、一人だけ資料がない人がいるって、この前、俺、言いましたよね?」
「ん?」
俺は、今回亡くなった熊井太郎氏のC金庫の資料がなかったことを部長に伝えた。
部長は不思議な顔をした。
「え?
どういうことだ?
熊井太郎は、C金庫案件の人物だったのか?
かつ、やつの資料だけがない?」
そのとき、会議室のドアがノックされた。
若川君に案内された総務部長が、会議室にやって来た。
「や、どーもどーも。
馬田部長。
大変なことになったな~」
馬田部長は、俺に小声で言った。
「ちょっとそのC資料の件は、後で話そうな。
まだ総務部長には言うな!」
総務部長は、会議室の席に座ると言った。
「熊井太郎についてなんだけどさー、さっき愛知支社の総務部長にきいたんだけど」
総務部長いわく。
熊井太郎氏は、少し不思議な死に方だったので、警察が調べているという。
「障害物もない、平な路上で、なぜか頭を強く打って死んでいた。
そして、もっと悪いことを警察は言ってるそうだ」
と総務部長は言った。
俺と馬田部長は、総務部長の顔をじっと見た。
総務部長は言った。
「熊井さんは、夜、路上で人と争っているところを近隣の住民に通報されたことがあるんだって。
女と男と大きな声で揉めていることがあったという。
そのときには、警察はプライベートな問題として、うちの会社にまでは連絡してこなかったが、今はそちらの線も考えているみたいだ」

「え?つまり?
どういうことです?」
「揉めていた人によって殺されたってことですか?」
次に総務部長は、もっと恐ろしいことを言った。
「そして、数日前は、女性と揉めていたのをまた住民に通報されている。
今度は、うちの社員と名乗る女性と。
でも警察は、女性の名前まではきかなかったそうだ。
警察が駆けつけたら、『同僚です、単なるつまらない喧嘩です。ご迷惑かけてすいません』と二人ともすぐに謝罪したから」
「ええっ!!」
「大変心配なので、私はこれから愛知に行ってくる。
人事部さんは誰が来てくれるの?
部長??」
馬田部長は総務部長に言った。
「いえ、すいません。
私はちょっと行けないので、この犬田君がお共させてもらいます」
「なんだよ。
馬田さん、愛知県出身だろ?
故郷に帰ると思って、一緒に来てくれると思ったのに。
犬田君とじゃちょっと心細いな~」
と総務部長は言った。
「すいません。
犬田は役に立つと思いますので。
お願いします」
と馬田部長は言った。
*******
C金庫の”色恋沙汰問題社員リスト”にあった熊井太郎氏の名前。
女関係にだらしない熊井太郎氏?
っていうか、それだけじゃない。
俺にはそれより、もっと引っかかってることがあるんだけども。
社長のことだ。
情報は共有した方がいい!
さっき馬田部長に止められたけど、俺は総務部長にC金庫のことを言おうとした。
「あの、総務部長・・・・・・」
と俺は言いかけた。
そこで馬田部長に、言うな!というように腕をひっぱられて、制された。
俺は、馬田部長の顔と総務部長の顔を見比べた。
「なんだい?」
と総務部長が言うと、馬田部長が自分で話し始めた。
「あ・・・あの。
実は、熊井太郎は、大昔、会社内でも何か色恋沙汰で問題を起こしていたらしいんです。
こちらには、もう詳しい資料はないんですけど」
そのことは、意外にも、総務部長にとっては、あまり目新しい情報ではなかったようだ。
「そんなの知ってるよ。
私もチラッとだけだけど、昔、噂を耳にしたことあるよ。
熊井君が女性関係に問題があったことは」
総務部長はサラッと流した。

違う!
俺が総務部長に伝えたいのは、もっと違うことだ。
C金庫の熊井さんの資料がなくなったことだ。
総務部長は、俺に向かって言った。
「犬田君、何時頃出られそう?
昼には出られるか?
東京駅発の新幹線が12時ジャストにあるんだけど」
俺は答えた。
「は、はい」
次に総務部長は、言った。
「あー。
この件だけど、社長には、さっき、一応簡単に今わかっていることだけは報告した。
後は、私が現地に行ってみて、何かあれば逐一報告することにしている」
そして総務部長は、俺らにとってはとてつもない恐ろしいことをサラッと言った。
「社長もね、非常にびっくりされていたよ。
だってね、一昨日自分が訪問した愛知支社で、まさかそんなことが起きるとは思わなかったって」
******
俺と昼12時の東京発名古屋行きの新幹線に乗ることを確認してから、総務部長は自分の部署に帰って行った。
総務部長が去ると、馬田部長は言った。
「犬田、おまえは現地で、出来るだけ情報を取って来い。
逐一、報告しろ。
俺はこっちで、出来るだけ調べてみる。
俺がサインを出すまでは、余計なことは総務部長にも誰にも言うな」
俺が反論しようとすると、馬田部長は変なことを言った。
「総務部長は、俺より容疑者に近い。
あそこは、年齢も近いし、仲がいい」
あそこって、どこ?
馬田部長は続けた。
「こちらの動向が、うっかりしたことで総務部長を通じてホシに伝わってしまうかもしれない。
いいか?犬田、そこを気をつけろ」
部長は、刑事ドラマの刑事気取りになっていた。
でも、俺は確認したかった。
容疑者についての認識が、俺と部長と同じなのか?
俺は、部長に確認した。
「熊井太郎氏の書類は、社長が盗んでいったというお考えですか?」
部長は黙って頷いた。

俺は、総務部長と一緒に、東京駅発名古屋行きのお昼の新幹線に乗った。
俺の隣の席で総務部長は、イライラして落ち着かなかった。
「長い会社人生で、こんなこと今まで経験がない。
あ~あ。あ~あ。
なんだか変なことになったなあ~」
「はあ」
あとは、総務部長は終始無言だった。
無言だが、落ち着かなく、目を閉じたり、目を開けたり、缶ジュースを飲んだり、また目を閉じたり、イライラソワソワしていた。
東京駅で購入した美味しそうなお弁当も食べずにいた。
総務部長が黙っていたので、俺は、自分の考えを、自分の頭の中でゆっくり進めることができた。
そして思いついたことがあったので、俺は座席を立った。
「総務部長、僕、ちょっと煙草吸ってきます。
すいません」
落ち着かなかった総務部長は、普段の顔に戻った。
「なんだ。
犬田君は、まだ煙草吸ってるのかね?
社員のほとんどが煙草吸わなくなったというのに!」
と、日常の総務部長の顔に戻り、説教を始めた。
俺は、新幹線のデッキに出ると、馬田部長に電話をした。
「部長、俺、気になったことがあって」
俺は、馬田部長に、若川君のことを調べるように伝えた。
「会議室に俺と部長と社長がいたとき、若川君が部長を呼びに来たでしょう?
大したことじゃないのに、部長を会議室から連れ出した。
あれは何なんですかね?
今がいいのかどうかは、部長が判断してくださって結構ですが、どこかのタイミングで、若川を問い詰めてください。
要するに、若川は社長に頼まれたのではないかと。
部長を会議室から連れ出すために。
俺、気づいたんです。
若川と社長は、同じ大学出身なんです。
あまり、この会社では少ない大学です。
そのことで以前から若川は、社長にシンパシーを感じているようでした。
社長は、そんなところ利用して、若川に近づき、自分の言うことをきくように指示したんではないでしょうか?
そして、部長を会議室から去らせたあと、いつもは社長がやらないはずの行動。
すなわち、俺のことはお茶を買いに行かせることによって、会議室から出した。
社長が一人でC金庫の資料を見るために」
電話越しの馬田部長は、言った。
「おお。
おまえ、すごいなあ。
ワトソン君!
ヘイスティング!
西園寺君!
わかった。
若川のこともちょっと調べてみる」
と言った。
馬田部長は、すっかり名探偵のつもりだった。
俺を探偵の助手扱いした。
部長は、言った。
「熊井太郎のC金庫の書類は、もうない。
俺たちも見たことがない。
20年前にどんなことがあったのか、俺たちは知らない。
お前は、どうにか、愛知支社で熊井太郎のことを知っている社員たちにそれとなく事情をきいてくれ。
俺はこっちで、熊井太郎のことをよく知っている人を探してみる。
社長と若いころなんかあったのかどうかとか。
俺はあいつとは同期入社だが、バブル時代で、同期があまりにも多すぎて、あんまりやつのことを知らないので」
部長のその話をきいているうちに、俺はもう一つ思いついた。
「部長!
セクハラ委員会の方も調べてください。
社長は、2か月前のあの日、俺たち人事部の資料で、不倫社員を調べていた。
そして、その後、セクハラ委員会の資料を見に行った。
そちらにも何か、決定的な何かがあるかもしれません」

俺と総務部長が愛知支社に着くと、いくつかのことがわかった。
俺と総務部長は、愛知支社の総務部長と一緒に警察の話をきいたのだが。
熊井太郎氏は、昨日、路上で死体を発見されたが、実際に死んだのは、昨日の早朝かあるいは、その前の日の夜かもしれないということだった。
人通りのない、寂しい、かつ、とても寒い場所に死体は倒れていたという。
愛知支社の総務部長は説明した。
「その道路は、昔はあちこちに行くときに便利で、大通りを通るよりもショートカットできる近道で、よく人が通ったんだけど。
去年わいせつな暴行事件がそこで起きてから、市民に避けられがちな道なんです」
警察は言った。
「社員さんたちに少しお話を聞かせてもらいますが、構いませんね?
また部長さんたちにもおうかがいすることがあると思うので、ご協力ください」
本社の総務部長と、愛知支社の総務部長は、頷いた。
老人でもない熊井太郎が、平らな路上で、自ら転んで、頭を強く打って死んでいたのはおかしい。
誰かに何らかの乱暴を振るわれた可能性があると、警察は見ているようだ。
しかし、警察はこうも言った。
「一昨日は、東京から来た社長さんを囲んで、社員食堂で皆さんで宴会をなさっていた。
熊井さんは酔っぱらってしまって、ご自分で転んだのかもしれませんね」
俺は震えた。
やっぱり、社長、からみまくりじゃないか。
愛知支社の総務部長は、警察にこう語った。
「熊井太郎は、しらふのときの素行は悪いですが、酒でべろべろになっているのはあまり見たことないです。
少ししか酒は飲まないし、普段は宴会の最後でもいつでもシャキッとしてました」
『しらふの時の素行悪い』って言っちゃってる。
しかし、愛知支社の総務部長は、少し間を取ってから、
「ああ。でも、一昨日はどうだったかな?
多少、飲みすぎていた可能性はあるかもしれない。
社長が来てくださった一昨日は特別で、みんなもどんちゃん騒ぎで、いつも飲まない人も飲まされていた。
嫌でも飲まなきゃいけないような雰囲気だったし」
と、言った。
警察は言った。
「熊井さんのアルコールの摂取程度は、詳しくは今、調べてますけどね」
警察と話をしたあと、愛知支社の社員食堂で、俺と本社総務部長は休憩した。
きちんとした応接室に案内されたのだが、俺たちは社員食堂を選んだ。
新幹線で食べなかったお弁当を開いて、自動給湯装置からお茶をもらった。
お弁当を目の前にしながら、総務部長は言った。
「ここで宴会があったのか。
あ~あ~。
困ったなあ。
まずいなあ」
総務部長は、もう殺人を疑っていなかった。
「社長が突然来たからって、浮かれちゃって、突然社員食堂で宴会開いて、飲めない社員を足がもつれるほど酔っぱらわせて、危険な目に合わせる会社なんてまずすぎるよ。
今どき、そんな会社あるかい。
昭和の体育会系かい?
地方の支社は、まだ私が入社した時代と何も変わっていない!」
と、総務部長は、顔をしかめて頭を振った。
彼的には、殺人よりも、そちらの方を心配していた。
そういうことをいつも気にしている立場の人からしたらそうだろう。
あるいは、総務部長は酒が飲めない人だから、若いころ、先輩や上司に無理強いされた嫌な記憶でもあるんだろうか。
俺からしたら、みんな大人なんだから、上司に勧められたからって飲む飲まないって、そんなの自己責任じゃないないかよと思うけどね。
むしろ熊井太郎氏が、宴会で酒飲まされて酔っぱらって自分で転んで死んだ方がずっといい。
社内の誰かに殺されるよりはね!
食欲がすっかりなくなってしまった総務部長は、ノロノロとお弁当をつついていた。
「総務部長。いい加減に早く食べないと、オカズが腐りますよ」
と、俺は言った。
先に食事が終わった俺は、社員食堂をぶらっと歩いた。
もう日没近くになっていた。
この時間の社員食堂は、ご飯を食べる場所ではなく、社員の休憩場所や、ちょっとした打ち合わせのスペースとして使われていた。
食堂のあちこちに散らばって少人数のグループ達がいた。
俺は、食堂にいるその人たちに、声をかけて歩いて回った。
「ご休憩中、少しすいません。
ちょっとお話をきかせてもらえませんか」
「打ち合わせ中、すみません。
お時間を少しいただけませんか?」
などと。
驚いた顔をして俺を見る愛知支社の社員に向かって、俺は本社のIDカードを掲げた。
(まるで警察手帳のように)
IDカードには、所属部署、顔写真、名前、位が記入されている。
「本社・人事部の課長、犬田です。
一昨日の宴会や、熊井太郎さんのことについて少しお話をきかせてください」
しかし、食堂で会った社員たちからは、あまり有益な情報は得られなかった。
「一昨日の飲み会では、私たちもみんな結構べろべろだったので、よく覚えてません。
社長が来てくれて、嬉しくって盛り上がって」
「ねー、盛り上がったよね。
全都道府県の中で、愛知が今一番、市場のシェアがいいので突然来ました!なんて社長に言われたら」
「熊井さんもいつもよりは飲んでたかな?」
「熊井さん、最近早朝ジョギング始めたって言ってたから、何かそれがよくなかったんじゃないかなあ?
体に負荷がかかっていたっていうか」
俺が、テーブルに戻ると、総務部長は言った。
「何してたんだ?犬田君!
愛知支社の社員たちを動揺させないでくれよ!」

そのとき、馬田部長から俺のスマホに電話があった。
俺が出ると、部長の一言目はこれだった。
「かぶらぎ君。
どうでしたか?」
あ、この人、今度はテレビの”相棒”になっている。
俺は、スマホを持ったまま、総務部長に頭を下げたあと、その場を少し離れた。
俺は、馬田部長にここで知ったことを全て伝えた。
自分では有益じゃないと思った情報も、全て伝えた。
馬田部長からも、俺に報告があった。
「セクハラ委員会の方はな、人事部長の俺にも絶対に資料を見せてくれない。
今度の社長みたいな女性のかつ会社の大幹部には見せるが、それ以外の人には絶対に見せてくれないそうだ。
独立した組織ということで。
特に人事部は、昔、セクハラ社員やパワハラ社員の味方して、弱い社員たちを切り捨ててきた歴史があるというのが、彼らの見立てで、俺たちには特に厳しいようだ」
俺は少し考えたあと、思いついた。
「馬田部長、セクハラ委員会の資料は、多分、俺が手に入れられます。
俺に案あります。
わかりました。
セクハラ委員会の資料は俺が東京に戻ってから調べます。
部長は、過去の熊井太郎さんのことと、社長との関係を引き続き調べてください」
俺は馬田部長との電話を切ったあと、決断した。
自分の恋人(不倫相手)を、セクハラ委員会に送り込もう。
俺の彼女は、総務系とか人事部系に無関係だ。
管理職でもない。
経営側にも無関係だ。
若い女性社員だ。
どちらかというと、セクハラ被害者の方の立場に近い人だ。
セクハラ委員会のメンバーになることができる資格がある。
セクハラ委員会設立当初は協力してくれた女性社員は多かったが、最近は二の足を踏む人が多くって、委員会メンバーに志願する人は少ないときく。
今は、志願すれば、すぐメンツに採用されると思われる。
俺の彼女をセクハラ委員会に送り込んで、調べてもらおう。

その日、愛知支社が取ってくれた宿で寝るとき、ベッドで俺は自分の可愛い彼女のことを思い浮かべた。
月一で会う彼女。
妻には内緒の彼女。
俺がキスすると、可愛い顔でとろけてゆく彼女。
俺がおっぱいを触ると、体をくねらせる彼女。
俺がクリトリスをいじると、乱れる彼女。
挿入して、ピストン運動をすると、夢中になって俺にしがみ付く彼女。
今度は、彼女を抱いた後に、頼もう。
「君にお願いがあるんだ。
セクハラ委員会に入ってくれ」
次回に続く
➡エロ不良社員・殺人事件③ ④ ⑤ ⑥ ⑦
***********
〈最新ページに行く〉
〈索引ページに行く〉
〈女性の特徴別検索に行く〉
↓見てほしい全記事の題名!(しかし・・・注意・ちょっと開くまで時間がかかります!!)
全記事リスト