不倫の清算は、魔法を使っても無理らしい②
何度もやり直そうとするが

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とりあえず、私は玉川さんの会社に入社した。
3か月ほど過ごした。
仕事はメチャクチャ大変だった。
給料はソコソコで、仕事はおもしろくもあったが、時間的にきつかった。
しかし、そんなことより何より、会社において社長である玉川さんが、私のことを誰よりも重んじてくれたし、優しかったし、それが気分がよく、それは楽しかった。
独身で仕事のできる玉川さんは、以前の会社のときから、私がちょっと憧れていた男性でもある。
仕事に少し慣れてくると、私は玉川さんにプライベートでも近づいてみた。
しかし、私が玉川さんをお色気で誘惑しようとしたときだった。
二人でバーに行ったときに彼にしなだれかかった私は、きっぱり断られてしまった。
「ははは!」
玉川さんは笑った。
そのあと、玉川さんはじっと私の目を見て真面目な顔で言った。
「みんなには内緒にしとくから、二度ともう、こういう変なことはしないで!」
そして玉川さんは続けた。
「前の会社で、部署は違えど、僕は君の仕事の実力は認めていた。
そして、君が仕事においてはすごい優秀な人間だと力強く勧めてくれたのは、君の直属の上司だった権田さんなんだよ」
えええ?
私の上司でもあり、不倫相手だった権田さんが??
「でも、一方、君と権田さんの関係も僕は知ってた」
と玉川さんは言った。
ひえええ?そうだったの。
それも知らずに私は何という恥ずかしいマネを!
そこで、玉川さんは厳しい顔をした。
「僕とはそういうことは無しで!
ぜひビジネスの関係で頼む!!
余計なことはしないで、仕事で頑張って欲しい!」
そ、そうだったの???
でも〜!
ごめん!!
自分の恥ずかしい過去を知られた人とは、一緒に仕事できないわ。
何より、玉川さんと男女の関係とかそういうことを望めないなら、こんな仕事が大変なベンチャー企業にいるつもりはないわあ!
私は”猫のスプレー缶”を取り出した。
私はバーでスプレーを押した!
時間を3か月戻すゾ!!!
私はスプレーを100回ほど押した。
これには、指がヨレヨレに疲れた。
玉川さんやバーにいる人たちがあっけに取られているのも無視して、私は猫のスプレー缶を押し続けた!
3か月前に私は戻る!
私は、時間を戻して玉川さんの会社に入社することはやめて、ハヤシさんの会社に入ることにしたのだ!!
〚猫のスプレーの残量、254日〛
ハヤシさんの会社の入社にあたって、面接試験だけ受けた。
「形式的なものよ。ほぼ、入社決定よ」
とハヤシさんは、ニコニコしながらウィンクをして私に言った。
しかし、その次の日だった。
ハヤシさんにまた呼び出された。
次の日に呼ばれるなんて、予定外だった。
私に会うと、ハヤシさんは少し黙っていたが、やがて私の目を見て怒ったような顔で言った。
「不潔なことをする人は私は嫌いよ!」
どういうことだ?
きいてみたら、ハヤシさんの部下が、私が前に書いていたエロブログを見つけたそうだ。
そのエロブログに私は、匿名で権田さんと自分の不倫の顛末をおもしろおかしく書いたのだった。
でも私はブログを続けるガッツもなく、わずか2週間で更新をやめたのだったが・・・。
ハヤシさんの部下は、匿名と言えど、わたくしが無造作に書くプライベート部分などの文章の描写を見て、そのエロブログの作者を私だと特定したのだった。
あーあー確かに!!
書きました!書きました!
おもしろいかと思って、半年くらい前に、確かにたった2週間だけど不倫体験記のブログを書いてましたよ!!
前の勤め先の会社のことがよくわかるような不用意なことも、あるいは、私の経歴がわかるようなことや、今、住んでいるところがわかるような写真もたくさん掲載して、権田さんとの不倫の告白のエロブログやってました!!
猫使うわよ!!
時間を半年戻すわよ!!!
私は、186日分、186回、スプレーをプッシュする!!
うわ!!手が壊れるように疲れる!!!
でもしょうがない!私は猫のタイムマシーンスプレーを6か月分押した!
6か月、時は戻った。
〚猫のスプレーの残量、68日〛

時間を6か月戻して、私は自分の不倫ブログの公開直前に戻った。
私は不倫ブログを削除した。
あとは、おとなしく暮らして、半年待てばいい。
エロブログもやらずに、権田さんの奥さんの偽装メールのひっかけにも乗らずに、玉川さんの会社にも入らずに、私はおとなしくハヤシさんの会社に誘われる日を待てばいい。
6か月おとなしく過ごした。
しかし、いつまでもハヤシさんからは私に連絡がなかった。
待ちきれずに、私は思わずこっちからハヤシさんに電話してしまった。
「ハヤシさん。お久しぶりです。
そちらの会社で中途採用の募集なんかしてませんか?」
ハヤシさんは答えた。
「うーん。してるかもしれないけど、私にはごめん、よくわかんないわ」
え?
私は、
「つれないなあ!」
と言った。
「ごめんね、ごめんね。
私は、しがない、ヒラの営業ウーマンだからさ」
とハヤシさんは言った。
え?
ハヤシさん人事課長じゃないの?
この半年で何があったの?
私が過去をいじったことで、ハヤシさんの運命も何か変わっちゃったの?
いや、待ってよ。
ってか、ハヤシさんが人事課長になれなかったとしても、ハヤシさんってもう数年前からずっと、営業課長だったはずではないの?
ヒラの営業ウーマンって??
私が、そのことをきくとハヤシさんは言った。
「電話では話せないわ。
私、今、死にそうな気分なの」
と、ハヤシさんは言った。
どういうこと?
私は、ハヤシさんと洋風居酒屋で会うことになった。
そこでハヤシさんは、言った。
「私、人事課長になりそうだったのに、それが無しになり、それだけではなく、営業課長からも降格させられたの!
いえ、それどころじゃないの!」
ハヤシさんはお酒を飲んだあと泣き出した。
「私、2か月ほど前に、以前の取引先様の既婚者の男性と一回だけあやまちを犯したの!!
それが、今ころになって奥様にばれて、そこからうちの会社にもばれて!!
それよりも、困ったことに、私の夫にも知られることになって、夫は家を出て行ってしまったわあああ!」
ハヤシさんは洋風居酒屋のテーブルにつっぷして泣き崩れた。
**********
私は猫のスプレーを使った。
時を2か月前に戻した。
ハヤシさんが既婚者男性と過ちを犯した日を目指して戻した。
いや、しかし正確な日がわからなかったので、私は2か月より、少し多めに時間を戻してみた。
〚猫のスプレーの残量1日〛
2か月よりも多めに時間を戻したあと、私はハヤシさんに会いに行った。
そして相談事があると嘘をつき、ハヤシさんを強引に飲みに誘った。
ハヤシさんが既婚者男と過ちを犯す前に、私と、とことん話してほしかった。
飲みの席で私は、ハヤシさんに向かって、『不倫の危険性』について、熱弁をふるった。
魂をこめて、『不倫の罪』について説教した。
そして、一回の不倫の過ちにより地獄に落ちた人の話などをおおげさに話し、ハヤシさんをおどした。
また、もしも、私は自分の友達が不倫なんかをしたら、きっと軽蔑する!友達はやめる!とまで言っておいた。
結果、ハヤシさんは、過ちを犯さないですんだみたいだった。
ハヤシさんは無事に人事課長になった。
そして、その後、私がハヤシさんの会社に入社するための準備は進んだ。
しかし、入社の前にあの日が来た。
あの日とは、権田さんの奥さんからウソメールの来た日。
私がスマホを見ると、権田さんの奥様から
「●△ホテルで会わない?」
という偽装メールが来ていた。
私は、以前にならって無視しようかと思った。
しかし、実は、猫のスプレーで時間をやり直して、玉川さんの会社に3ケ月務めた時も、奥様からの無言電話は、いつでも続いていたことを思い出した。
私は思わず、メールに
「しつこいのよ!
私は会うつもりはない!
今度メールしたら訴えるますよ!」
と、拒絶メールを書いて返信した。
そして奥さんの反応を見ずにその夜は、すぐに寝た。
でも、私は次の日朝起きると、悩んだ。
悩んで、よく考えて、そして決断をしなおした。
私は自分の家で、猫のスプレー缶の最後のワンプッシュを使った。
私は一日前に戻った。
〚猫のスプレーの残量0日〛
私は、権田さんの奥さんへの拒絶メールを書く前に戻った。
そして、返信をした。
「奥様ですよね?
私はもう二度と権田さんに会うつもりはなかったのですが。
しかし、まずはきちんと過去の過ちのお詫びをさせていただくために、明日は奥様に会いに●△ホテル行きます」
と返信をした。
●△ホテルで、奥さんにちゃんと会って謝罪し、制裁を受けるなり、なんなりキッチリしようと思った。
そうしないと自分の人生はこれから先には一歩も進めないのだと私は悟ったのだ。
--------終わり-------------
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